序章 〜終焉〜 ページ1
あ、もうダメだ。ただ、そう思った。
粉々になっていく私の身体〈データ〉は電子の海に消えていく。
きっと、もう、私が復旧される事はないだろう。
目を閉じると、今までの楽しかった思い出が浮かんでは消えていく。
「A…?」
聞き間違えるわけがない。いつもその声に呼ばれるのを待ち続けていた。
首だけをどうにか動かし、声の方を見ると呆然とした表情の13が立っていた。
「13…やっほ…」
ヘラリと笑ったつもりだ。いつもと変わらない、私で笑ったつもりだった。
「っ!!何がやっほだ!!何だよその体は…何なんだよ!?」
珍しく慌てる13が最後に見れて不謹慎かもしれないけど、ちょっと楽しかった。
「ちょっと…無理しちゃっただけだよ」
「何がちょっとだ…カタコトマシーンの所に連れてってやるから「もう無理…だよ…」
13の目が大きく見開かれる。
「13だって、どこかでわかってんじゃない…?私のデータの…核が…もうボロボロなこと…」
お腹のあたりを撫でるふりをする。手の下にあるはずの肉のデータは、ボロボロの四角いデータに成り果てていた。
「そんなの、わかんねぇだろ?」
「わかるよ…モウ、モタナイ…コトモ…」
正直もう目の前もノイズが激しくてよく見えない。
慌ててこちらに近寄ろうとする足音が聞こえる。全てが無駄なのに。
「サーティーン…ワタシネ…」
「もう喋んじゃねぇ!!全部後で聞いてやるから!!だから!!」
「アナタガ…スキナノ…」
精一杯笑ってやった。
そこで私の限界が訪れたのか、私という〈データ〉が音を立てて崩れた。
これは、私…Aの、たった一つの、愛の記録の、終着点である。
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作者名:ちゃぶ台返し | 作成日時:2019年1月13日 20時