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「寝る前にどうしてもケータイ見ちゃってやめられなくて〜、夜更かししちゃいました!」
それ自体は嘘ではない。口角を上げて笑顔を作り直し、軽い調子で言う。でも先生は表情を緩めもしなかった。
「夜寝る前、ケータイで何を見ますか。」
「なにって…動画とか、SNSとか。」
普通は、そうだろう。答えたら先生は立ち上がった。あ、飽きたのかな。今度こそ私も帰ろう。鞄のファスナーを閉じて持ち上げかけた時だ。
「楽しいですか?」
何だその聞き方は。倫理の勉強よりSNSが楽しいかってききたいのか?そりゃ、倫理の方が楽しい奴のが少ないだろう。何が言いたい。
「まあ、そりゃ楽しいですけど。」
もういい、不真面目な生徒でいい。
「そうじゃなくて、あなたの生活が、です。学校生活、帰ってからお家での生活。楽しいですか。辛いですか。」
お家での生活、という言葉が重い鉛の塊のように胸の中に落ちて、心が掘り起こされていく。胸に染み付いてしまった悲しみや、憎しみや恐怖で胸が疼いた。自分の感情の変化でその言葉を投げかけた相手の意図を知る。まさに私はそれだった。ああ、もうこれは疑えなくなってしまった。全く読めなかった先生の意図は、いまはもう顔を見なくたってわかった。こんな風に聞かれたらこの優しさは赤ん坊にだって伝わる。焦ったかった。まだ意図が読めないうちに逃げ出しておけばよかった。もう逃げられない。こんなにまっすぐ心を見つめられたら、もう答えるしかない。
「さすが倫理の先生。言葉選びのセンスが敵わないや。」
「恐縮です。」
「いや、なんで生徒に恐縮するのww」
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雪 - コミックとかで漫画を見ています!更新できるんだったら頑張ってください! (12月20日 23時) (レス) @page6 id: afbcb35ddc (このIDを非表示/違反報告)
すん。 - とても面白い小説で、続きが気になります( ;;)♡戻って来て下さっ、たら嬉しいです^^♡ (2022年3月26日 21時) (レス) @page6 id: b6cd6f531a (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 数少ない夢小説なので気長に待ってます!! (2022年3月22日 1時) (レス) @page6 id: 769fe6ecc6 (このIDを非表示/違反報告)
Iden(プロフ) - 次回が見たいです...更新中止..また戻ってきませんか?? (2021年8月27日 14時) (レス) id: 83fd4258ec (このIDを非表示/違反報告)
ももた。(プロフ) - 貴重なたかやなの夢小説を見つけられたことだけでも嬉しいのに、お話も面白くて続きが気になります!これからも応援しています。 (2021年4月1日 2時) (レス) id: 485f6e79f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHiroiUsagi | 作成日時:2021年2月1日 3時