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倫理は今日の最後の授業だ。これが終わったらまた地獄へ戻らなければならないのか。このまま寝ていたら時間も一緒に止まってくれないだろうか。願ってもまあ、そんなことは起きない。授業は終わった。どんどん人がはけていき、教室は静まり返った。もともと人の少ない授業だし、もう教室に私しかいないのか。と思って顔を上げた時だ。足音がして、先生が私を見下ろしていた。
「宮沢さん。今日はずっと、寝ていましたか。」
怒る風でも心配する風でもない聞き方だ。授業の間ノートも開かずずっと机にうつぶしていた生徒に対し、一応声をかけておかなければいけないから、というようにも取れる。
「あはは、すいませーん。次はちゃんと起きて聞きまーす!」
「本当に睡眠不足なのであれば、私の授業などより、睡眠を優先させたほうがいい。睡眠は毎日必要ですが、倫理が必要になるのはこの先の人生のもっとずっと後に、しかも数えるほどしかないでしょう。緊急性は、そちらの方が圧倒的に高い。」
私はピリッときた。そりゃ、この一時間の授業さえ寝なければならないほど深刻な睡眠不足ってわけじゃない。遠回しにそれを指摘されているような気さえする。下手に出ているのが余計神経に触った。
だけど、言い争いも不毛。出ている言葉だけ聞けば、先生は全く悪いことは言っていない。イライラした様子を見せたら墓穴を掘ったようなものだ。
「はいはいわかりましたって〜!そんな風に言わないでくださいよ、そこまで睡眠不足じゃないですよ。」
自分からダメである自分を認める態度。争いを避ける有効な方法だ。顔は見ていないからわからないけれど、先生が抱えていた教科書を持ち直す仕草で、この不毛な会話を終わらせたい雰囲気は伝わってきた。そりゃそうだ、ただでさえ仕事の多い先生たちが、こんな不真面目な生徒一人に割いている時間などたいしてあるわけがない。私は散らばった机の上を片付けはじめ、ペンを筆箱に戻して鞄に入れた。ここまでやれば、私が帰りたい雰囲気も伝わったはずだ。引き止めることもないだろう、と思った時だ。
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雪 - コミックとかで漫画を見ています!更新できるんだったら頑張ってください! (12月20日 23時) (レス) @page6 id: afbcb35ddc (このIDを非表示/違反報告)
すん。 - とても面白い小説で、続きが気になります( ;;)♡戻って来て下さっ、たら嬉しいです^^♡ (2022年3月26日 21時) (レス) @page6 id: b6cd6f531a (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 数少ない夢小説なので気長に待ってます!! (2022年3月22日 1時) (レス) @page6 id: 769fe6ecc6 (このIDを非表示/違反報告)
Iden(プロフ) - 次回が見たいです...更新中止..また戻ってきませんか?? (2021年8月27日 14時) (レス) id: 83fd4258ec (このIDを非表示/違反報告)
ももた。(プロフ) - 貴重なたかやなの夢小説を見つけられたことだけでも嬉しいのに、お話も面白くて続きが気になります!これからも応援しています。 (2021年4月1日 2時) (レス) id: 485f6e79f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHiroiUsagi | 作成日時:2021年2月1日 3時