そして、誰も“俺の恋心”を知らない。 ページ3
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憂鬱な気分のまま部活に向かう。
体育館に行くまでの僅かな時間さえもが俺の冷静な気持ちを奪い去る。
侑とは同じクラスだが、あいつは治と一緒に行くため必然的に一人になる。
今は、侑に会いたくない。
嫉妬で頭がおかしくなりそうだから。
「角名!」
後ろからかけられた声。
男の声だけど少し高め。
振り返るとやはり予想通りの人が立ってる。
「、北さん。」
いつもよりも小さな、呟くような声が口から漏れる。
良かった。
侑じゃなくて。
「顔、酷いで。どないしたん。」
クエスチョンマークを付けない少し強めの言い方。
怒っているのではなく、これが北さんの優しさなんだ。
「なんでも、ないです。」
嘘だ。
今にも嫉妬で狂いだしそうなくらいなんだから。
「、そうか。部活には引っ張んなよ。」
深く追求しないのも北さんの優しさ。
少し、落ち着いた。
「はい。」
これで侑に会っても大丈夫そうだ。
頭の中をAのことから部活のことに切り替える。
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「ナイスキー!」
「ナイスレー!」
「ドンマイドンマーイ!」
熱気がこもる体育館。
今は6対6の試合形式の練習。
俺のチームには侑と銀、理石と他のベンチメンバーが二人。
3年生はうちのチームにはいない。
相手チームには治と北さん、大耳さんと他のベンチメンバーが三人。
ベンチとはいえ、強豪校のベンチメンバーだからそんじゅうそこらの学校のスタメンよりも強い。
「角名!」
侑から上げられる綺麗なトス。
あぁ、綺麗だ。
『...かっこよかったなぁ、。』
ッ!
侑によって上げられたトスはトンっと軽い音をたててこっち側のコートに落ちる。
、空振り。
「、あ...。ごめ「何考えててん。」、。」
侑に被せられる言葉。
Aのことだ、なんて言えずに黙る。
「なぁ、答えろや。」
黙る俺に怒りをあらわにさせる侑。
言い訳をしても通用しないだろう。
「角名!お前ええ加減に「やっぱり体調悪かったんか、角名。」、は?」
怒鳴ろうとした侑の声に北さんが被せる。
、体調?
悪くない。
むしろ良好な方だ。
「帰って休め。」
あぁ、なんだ。
庇ってくれたのか。
「なんや体調不良かいな!」
北さんにお礼言わないとな。
そして、俺は“二人の恋心”を知っていた。→←そして、誰も“私の恋心”を知らない。
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みや(プロフ) - ありがとうございます!北さんは背中を押す役が結構多いので、どこかで必ず報われる作品を作ろうと思います! (2017年12月25日 8時) (レス) id: c376f87d56 (このIDを非表示/違反報告)
湯たんぽ - 最高したし涙も出てきました!!北さん好きなので余計に、、、、これからも頑張って下さい (2017年12月25日 5時) (レス) id: e17635b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みや x他1人 | 作成日時:2017年12月8日 17時