ハートがよんこ ページ4
「A〜っ」
後ろ姿だけど、分かる。
あの丸くて撫でたくなるような頭はAだ。
「…リーチくん？どうしてここに…。
もう寮へ帰ったんじゃ、」
「A。オレもプリント運び手伝う」
「…い、いやっ、…僕が任された事ですから…
…僕がやらないと…」
…オレはAを見守るだけにした。
にしても、あの担任。
Aにこんな異常な量を持たせやがって…
絶対使わないだろ。
よたよたと今にもプリントを落としてしまいそうな歩き方。
(…ひよこ…)
「…ふぅ…、
…わっ！？」
前から歩いてきた2年の奴がAの肩にぶつかった。
その拍子で、Aが持っていたプリントが崩れ落ちた。
「…あ…っ、プリントが、」
「A！大丈夫…？」
二年の奴は謝らずに去っていこうとしていた。
「…センパイ、謝ってよ」
「…あぁ？なんで俺が？
ぼーッと歩いてたお前が悪いよな？」
「…、…いいから謝れよ」
少しドスを効かせてそう言うと、Aが真剣な顔でオレの服の袖を掴んだ。
「…ダメです」
「…」
二年の奴は走り去っていった。
「…なんで止めたの」
「…君が悔しがる必要はありません。
…お願いですから、泣かないでください」
Aはオレにハンカチを渡した。
「…次、また…ああいう人がでたら、オレに言って。
すぐかけつけるから…」
「…はい」
廊下に散らばっているプリントを集めると、Aは軽く溜息をついてから立ち上がった。
「…やっぱオレ手伝う」
「え、いや悪いですそんな…」
「いーじゃん。トモダチ、として」
…めっちゃ恥ずかしい事言ったかも。オレ。
Aも固まってるし…
「…ふふ、…じゃあ、お願い…します」
Aは軽くお辞儀をした。
「…ん」
「…。…ありがとうございます、
フロイドくん」
小さな声で言ったその言葉は、きっとオレが求めていたものだったのだと思う。
(…今、キスしたら怒られる？)
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作者名：こゆんちゃん
| 作成日時：2022年12月2日 16時
