ワスレナグサ (ページ43)

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泣き疲れていつの間にか寝ていた私は、

隣の人に優しく肩を叩き起こされ

周りを見渡すと乗っていた人達は誰もいなくて

隣の人がトイレ休憩だと教えてくれた。

トイレはしたくなかったけど

次はいつ止まるか分からないから、

とりあえず出すだけ出してみようと

トイレに向かうと、

いつの日か会ったことのある人が見えて

思わず声をかけていた。

いきなり声をかけられること自体、

恐怖なはずなのに、その人は嫌な顔せず

こんな私にちゃんと目を合わせてくれた。

「確かにあった事ありそうだね。
俺の記憶違いだったら申し訳ないんだけど
受験受けた日に正門まで送った女の子かな？」

『はい！そうです！やはりあの方でしたか！』

「何その話し方！笑
なんか武士みたいなんだけど笑」

『見覚えある人だなと思って
何も考えないで話しかけてしまいました…
今冷静になって考えたら怖いなって…』

「まあ確かに俺が女の子だったら怖いかもね？笑
もうバス戻るのかな？」

『はい！トイレ終わったので！』

「じゃ一緒に戻ってもいいかな？」

『もちろんです！』

名前も知らなければ、

どんな人かも分からない私にこの人は

初めてあったあの日のように

優しく接してくれた。

「俺の隣の席誰もいないんだよね。
あなたが良ければだけど隣に来てくれない？

東京行くまで話さない？」

『ええ！いいんですか？』

「いいよ！運転手さんには俺から伝えるね！
今貴方が座ってる席の番号教えて貰ってもいい？」

私が席の番号をその人に伝え、

バスに戻るまで歩幅を合わせて無言で歩いていた