ワスレナグサ (ページ36)

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私たちが向かったお店は、

お父さんの知り合いの小洒落た焼肉屋さん。

何かある度にここに来ては食べてるんだ。

誕生日だって、兄が高校合格した時だって

いつもここに来てはご飯を食べて

その帰りにコンビニでアイスを買って

アイスを食べながら歩いて帰るのが楽しかった。

そんな当たり前の日常が

これからは当たり前じゃなくなっていくのが

ただ虚しくて不安になっていくだけ。

落ち込んだ時に当たり前のように

祐希や兄に励まされていたことも

お母さんと一緒にカフェ巡りすることも

お父さんとドライブすることも

真佑と女子会することも、

これからは頻繁には出来ないのだ。

私が決めたことなのに

どうしてこんなにモヤモヤするのだろうか。

健太「Aが東洋行くって聞いたとき
本当は止めたかったし大丈夫かな？って
ずっと心配してるんだけど、
これも経験だと思うからさ頑張ってよ？」

涙ぐんで話す兄に釣られて

また泣いてしまう私に祐希は何も言わずに

身につけていた帽子を私に深く被せてきた。

多分私の泣き顔を他のお客さんに

見られないようにしてるんだろう。

石川「Aはやっていけると思いますよ。
ただ真面目すぎるから、そこだけが心配です」

祐希は私のことを何でも知ってるのに

私は祐希の事を何も知らない。