それは執着にも似た ページ40
心臓がとても軽かった。私の人生においていつも邪魔をしてきた鉛から解放された感覚。私たちの空間にピリリと音を立てたのは、鞄に入れていたスマートフォンだった。画面に表示された黛の文字に。まゆくん、無意識に声が出た。
｢まゆくん？｣
｢湊くん、私たちもうお別れみたい｣
｢お別れって、まだ話は終わってないやろ｣
｢うんん、終わった。私、全部知ってるって言ったでしょ。だからお父さんの借金の返済が完了してることも知ってる｣
｢なら、なんで｣
｢それはこっちのセリフでもあるんだけどなぁ。湊くんが私を監視する理由なんてとっくの昔に無くなってるんだよ。なのに、こんなところまで私を追いかけちゃってさ｣
｢それ、だれから｣
｢……ともだち｣
スマホに目を落とし、通話ボタンをタップした。少しかすれた、まゆくんの声が電子音を挟んで耳に届く。
もしもし、起きたんだ。今？んー、もう帰るよ。美味しいお菓子まゆくんにあげようと思ったんだけどさ、まぁ。一緒にカップ麺でもすすろうよ、まゆくん。……え?なんでまゆくん、そんなに焦って＿＿＿
｢電話の相手ってもしかしなくても黛灰やろ｣
｢え？｣
｢それ知っとん、もちさんたちか俺か明那、まゆしかおらんし。でも、あー。納得がいったわ。なんで仕事しとんは俺なのに、まゆを通して終わったんか。あんだけの借金をあんな男に返す当てがついたのか。全部Aちゃんがおったからかぁ。それも全部知っとって、全部演技だったん？ふーん？………そんで、俺を好きだから一緒にいたとか言いながら、アンタは俺を置いて今からまゆんとこ帰るんやろ？全部ばれたから。俺をこんなことにしておいて、のうのうと｣
声はやけに平坦だった。私はただならぬ雰囲気に気圧され、思わず後ずさった。それを湊くんは長い腕で捕まえ、そしてぎゅっと力を込める。遠慮も配慮もない力任せの拘束に、掴まれた私の手首は簡単に音を上げ、その拍子に落としてしまったスマホを、湊くんは踏み潰した。
｢行かさんよ｣
｢、｣
｢大丈夫、痛いことはなんもせんから。Aちゃんは今まで俺とおったときみたいに俺だけを見てればえぇんよ。そのために相手もしたくない女をたぶらかして、仕事して、それも今日で終わる予定やったのに。最悪のタイミングで本当を知ったなぁ、俺ら｣
私が抵抗よりも先に、湊くんは私の顔をハンカチで覆う。それに付着していた匂いを嗅ぐと私の意識はなんだかぼやけてしまった。
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ひな(プロフ) - ぴた様の書かれる言葉や文が大好きです。素直に好きだという２文字しか出てきません。胸焼けしてゆくみたいに心の底からすごいって思います。お話が面白くて、語彙力が高くて、キャラ像が崩壊しなくて、いい意味で胃もたれしました！ありがとうございました！！ (5月9日 1時) (
レス) @page50 id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
弓月有無％(プロフ) - 完結おめでとう御座います！！世界線も繋がってるの面白かったですし、やっぱり惹かれる様な題名や言い回し、表現の仕方 物語で毎回どきどきします！後書きまでも共感しましたし＋αも本編も迚も胸に残る様な感じで印象深く本当に素敵でした!是からも応援しております！ (3月28日 21時) (レス) @page50 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 桃花さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。これからもどうかよろしくお願いします🫶 (3月13日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
桃花 - めっちゃ面白いです！作者さんの作品好きで全部見てるのですが、この作品が特に好きです！ドロドロとした関係で、ストーリーめっちゃ考えられててすごいなって思います。 (3月13日 23時) (レス) @page41 id: 395406b1cf (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - しずくさん» コメントありがとうございます💓これからも楽しんでいただければ嬉しいです！ (3月8日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2023年12月15日 16時
