心臓麻痺 ページ32
うさぎちゃんの巻かれたツインテールを眺めるが好きだった。ぴょこぴょこ歩くその姿もうさぎみたいで、見ていて飽きない。特典が貰えるから一緒に映画行こ！って私を誘った彼女は、今日も無邪気に笑っていた。
そんなうさぎちゃんものご機嫌も、電話一本で消えてしまったけれど。
｢ごめんね。ご飯行きたかったのに、どうしても無視できなくてぇ｣
｢仕事なら仕方ないよ｣
｢約束破っちゃうし、｣
｢面白い映画教えてくれたから、いーよ。どうしてもって言うなら、代わりにまた私と遊んでね｣
｢！、うん。もちろん！明日連絡する！｣
｢ふは！さすがに早すぎるよぉ。……バイバイうさぎちゃん」
｢またね！｣
何度も何度も振り返りながらうさぎちゃんは小さくなっていく。彼女は大袈裟なほど大きく手を振って、私はそれに小さく振り返す。夜の世界にいながら染まりきらないうさぎちゃんと、昼の世界にいるはずなのに真っ黒な私。
羨ましい、なんて。きっとそれはお互い同じなのだろう。羨んではならないものほど、私たちはどうしてもと欲しがってしまう癖があった。
｢るー、らら。らら、ら｣
先程見た映画の主題歌をうろ覚えのまま口ずさむ。いつになく気分は上々で、足元は軽やかに。浮かれていた。私の人生はごみ溜めのはずなのに、浮かれてしまった。それはまゆくんと再会できたことや、うさぎちゃんと出かけたこと、空が晴れていたこと、湊くんが笑ってくれたこと。空の青さも心地よくて、普段気にも留めないのに、何故か今日はそれらがよく見えた。
｢＿＿＿＿湊くん？｣
すれ違う人混みの中で一際輝い銀髪。視界の端にそれがチラリと紛れ込み、私を捕らえて引っ張った。仕事中かな。声掛けちゃダメだよね。姿見れてうれしい。色んな感情が渦巻いて、私は彼に目を奪われたまま立ち止まる。でもやっぱり、声が聞きたいなぁ。
…………今日くらい欲張っても、赦されるかな。
｢アンタ邪魔だよ｣
ドン！って後ろから勢いよく押される。わって情けない声を上げて私は道の真ん中でバランスを崩し、転んだ。振り返ると、声の主が肩を怒らせながら遠くなっていた。
心臓が妙に静かになる。脳みそも体温も、全部が冷めていく感覚がした。調子に乗ったなぁって、私は何故か、納得できてもすぐに立ち上がれなかった。
｢っAちゃん！大丈夫！？｣
どうして湊くんなのと聞かれたとき。私は今なら、グダらずに答えられる気がした。
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ひな(プロフ) - ぴた様の書かれる言葉や文が大好きです。素直に好きだという２文字しか出てきません。胸焼けしてゆくみたいに心の底からすごいって思います。お話が面白くて、語彙力が高くて、キャラ像が崩壊しなくて、いい意味で胃もたれしました！ありがとうございました！！ (5月9日 1時) (
レス) @page50 id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
弓月有無％(プロフ) - 完結おめでとう御座います！！世界線も繋がってるの面白かったですし、やっぱり惹かれる様な題名や言い回し、表現の仕方 物語で毎回どきどきします！後書きまでも共感しましたし＋αも本編も迚も胸に残る様な感じで印象深く本当に素敵でした!是からも応援しております！ (3月28日 21時) (レス) @page50 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 桃花さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。これからもどうかよろしくお願いします🫶 (3月13日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
桃花 - めっちゃ面白いです！作者さんの作品好きで全部見てるのですが、この作品が特に好きです！ドロドロとした関係で、ストーリーめっちゃ考えられててすごいなって思います。 (3月13日 23時) (レス) @page41 id: 395406b1cf (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - しずくさん» コメントありがとうございます💓これからも楽しんでいただければ嬉しいです！ (3月8日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2023年12月15日 16時
