対談 ページ29
俺のしてきたこと、全部ムダだったって分かったから。
どうして連絡してきたのって尋ねた私に彼はそう答えた。ココアを片手につまらなさそうだった。
通話は五分にも満たなかったけれど、私たちはその数分で会う約束を取り付けた。会える？って事務的で感情も挟まれてなくて、それでもきっとお互いこの日を待っていた。なんとなく、そんな気がしてしまった。
｢むだ？｣
｢うん。結局Aはこっち側と関わっちゃったから、もうどうでもよくなった｣
｢え待ってよ。こっち側ってなに？｣
私は困惑して聞き返したのに、まゆくんはそこに触れずココアを啜る。………こっち側。そう言われてポンと思い出したのは、お父さん。そしてそのお父さんの人質を監視する、湊くん。そんな彼が所属するのは、
…………にじさんじ？
まゆくんは僅かに目を見開いた。まさか私がここまで知っているとは思わなかったのだろう。私も私で正解するとは思っておらず、二人で似たような顔をしていた。
｢まゆくんにじさんじにいるの？｣
｢……にじさんじ、知ってたんだ｣
｢まぁ、最近いろいろあって。いや最近ではないか。ちょっと前からね｣
｢じゃあ、｣
そこでまゆくんは迷うような表情をした。私はそこで彼が何を言おうとしているのか察してしまい、先に言ってあげようと思った。まゆくんは一見薄情そうに見えるけど、その実情に厚いことを私は知っていたから。
｢湊くんがにじさんじなのも知ってるよ｣
｢……………どこで｣
｢あんまり壁が薄い所で電話しない方がいいよ、ってまゆくん機会があったら教えてあげてよ｣
｢あのばか……｣
私は思うより冷静だった。そっか、まゆくんにじさんじにいたんだ。詳しくは知らないけれど、きっとお父さんの仕事のような、そんな団体なんだろうなと予想はついていた。……あれ、というか。そんなこと私に教えて大丈夫なの？そう尋ねると、まゆくんは｢あんまり良くはないけど｣と言いはしたが、首を縦に振っていた。
｢まぁ、今の俺はにじさんじじゃないし｣
｢え違うの？｣
｢元いた場所ではあるけどね。今はフリーでやってる｣
｢まゆくんってなんの仕事してるの？｣
｢……ハッカー｣
｢なんかすごそう。私はね、OL｣
｢知ってる｣
｢ありゃ。でも、そっか。にじさんじにいたもんねぇ｣
｢いなくても知ってたよ｣
私が首を傾げると、まゆくんはカップをようやくテーブルに置いた。
｢俺、案外心配性だからね｣
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ひな(プロフ) - ぴた様の書かれる言葉や文が大好きです。素直に好きだという２文字しか出てきません。胸焼けしてゆくみたいに心の底からすごいって思います。お話が面白くて、語彙力が高くて、キャラ像が崩壊しなくて、いい意味で胃もたれしました！ありがとうございました！！ (5月9日 1時) (
レス) @page50 id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
弓月有無％(プロフ) - 完結おめでとう御座います！！世界線も繋がってるの面白かったですし、やっぱり惹かれる様な題名や言い回し、表現の仕方 物語で毎回どきどきします！後書きまでも共感しましたし＋αも本編も迚も胸に残る様な感じで印象深く本当に素敵でした!是からも応援しております！ (3月28日 21時) (レス) @page50 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 桃花さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。これからもどうかよろしくお願いします🫶 (3月13日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
桃花 - めっちゃ面白いです！作者さんの作品好きで全部見てるのですが、この作品が特に好きです！ドロドロとした関係で、ストーリーめっちゃ考えられててすごいなって思います。 (3月13日 23時) (レス) @page41 id: 395406b1cf (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - しずくさん» コメントありがとうございます💓これからも楽しんでいただければ嬉しいです！ (3月8日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2023年12月15日 16時
