包んで ページ22
・……ことばに。でも私は、あの時なんて思っていたのかをすっかり忘れてしまっていて、輝くうさぎちゃの瞳ばかり思い浮かぶ。…………あ。
｢あんまり、｣
｢うん｣
｢あんまり触れないでって思った。わたし、うさぎちゃんとくっつくの好きだけど、あの時だけ｣
｢俺とうさぎちゃんがホテルから出てきたから？｣
｢だって。…………嫌じゃんか｣
｢……そうよなぁ。ごめんね｣
湊くんは私の背中に手を回した。抱きしめられて私の右頬が彼の銀髪でくすぐられる。ごめんなって思ってないくせに。私のご機嫌取りでこんなことやらされて可哀想。うさぎちゃん触った手であなたも触れないでよ。でも。
こんなことで心底安心して泣いてしまう私って、もっともっとかわいそう。けど仕方がない。だって私、この人のこと世界でいちばん大好きになってしまったんだから。私の目元に寄せられた指先に擦り寄る。私のごみ溜めには熱すぎるほどの温度だけど、火傷したって構わなかった。その火傷痕さえ、今は愛おしい。
｢Aちゃん絶対こっちの方来んやろって思とったけど、そういえばAちゃんが好きなお菓子ってあそこのコンビニしか売ってないよなぁ。後で買ってくるから一緒に食べよ｣
｢……いらない｣
｢じゃあずっと一緒におろ｣
｢無理だよ｣
｢無理じゃない｣
湊くんは腕に力を入れ、私を持ち上げた。そうして私を胡座をかいた膝の間に乗せると、目を細めて笑う。涙袋がぷくりと膨れた。
｢俺に触られるん嫌？｣
｢……今日は触んないで｣
｢俺がうさぎちゃんとホテルから出てきたから？｣
｢だからそうって＿＿＿｣
｢ふは、｣
｢なにがおかしいの。はなして｣
｢なんかAちゃん。今日、小さい子みたいやなぁ｣
｢はぁ？｣
｢可愛いってこと｣
もっと言ってよって湊くんの声は柔い。私は訳が分からなくなってしまって、ぼろぼろ頬を濡らしながら湊くんを見つめていた。どうして、私にそんなこと言ってくれるの。ダメだよ私、馬鹿だから。そんなことされたら学習して、あなたの腕の中で、泣けるようになってしまう。
｢Aちゃん、俺今からホテルで何しよったか話すからちゃんと聞いて。ずっと誤解されたままは嫌や｣
頷くと湊くんは、ほ、と小さく息を吐く。私を支える手に力がこもった。大きな手だった。
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ひな(プロフ) - ぴた様の書かれる言葉や文が大好きです。素直に好きだという２文字しか出てきません。胸焼けしてゆくみたいに心の底からすごいって思います。お話が面白くて、語彙力が高くて、キャラ像が崩壊しなくて、いい意味で胃もたれしました！ありがとうございました！！ (11時間前) (
レス) @page50 id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
弓月有無％(プロフ) - 完結おめでとう御座います！！世界線も繋がってるの面白かったですし、やっぱり惹かれる様な題名や言い回し、表現の仕方 物語で毎回どきどきします！後書きまでも共感しましたし＋αも本編も迚も胸に残る様な感じで印象深く本当に素敵でした!是からも応援しております！ (3月28日 21時) (レス) @page50 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 桃花さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。これからもどうかよろしくお願いします🫶 (3月13日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
桃花 - めっちゃ面白いです！作者さんの作品好きで全部見てるのですが、この作品が特に好きです！ドロドロとした関係で、ストーリーめっちゃ考えられててすごいなって思います。 (3月13日 23時) (レス) @page41 id: 395406b1cf (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - しずくさん» コメントありがとうございます💓これからも楽しんでいただければ嬉しいです！ (3月8日 23時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2023年12月15日 16時
