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前に進む君へ ページ41

日彩、って呼ばれて顔をあげる。叶がガラス越しで小さくなった飛行機を指さした。



「あれ、Aが乗るやつじゃない?」
「……かも」
「なに、元気ないじゃん。もしかしてもうホームシックとか?」
「………うるさい。お父さんは?」
「それは男だけの秘密だから言えないなぁ。でも後で弟君たちと一緒に来ると思うよ。……目を真っ赤にして」
「んーふふ。想像したらちょっと面白い」



空港の片隅で、私と叶は隣合ってくすくす笑った。
にじさんじを卒業してから、私は日常を一つ失った。しかしそれを惜しむ暇がないほどのスピードで私の環境は変化を迎える準備が進行していく。Twitterもdiscordも、もう消してしまった。持ち物は身軽じゃなきゃ、重くて飛べない気がして。でも自分で置いていったクセにその軽さが怖くて、右手はずっと叶の小指を握っている。



「ふは、かわいー顔。せっかくだし葛葉にも見せてやりな」
「やだよ。絶対なにヘラヘラ笑ってんだよって言うもん」
「言うかもね。でもあいつはツンデレ属性だから仕方ない」
「葛葉がツンデレぇ?」
「そーそー。あいつ、Aのこと大好きなんだよ」
「……私も好きだけどさ」
「だって。良かったね葛葉」
「え!?」



振り返ると、すぐそこに葛葉はいた。ほんのり色づく頬は白い肌によく映え、周囲の視線を集めている。やば、目立ってるかも。急いで叶の小指を離すと、すぐにそれは離れた手に捕まった。



「なんでお前ら手なんか繋いでんの」
「葛葉も反対側繋いだら?」
「俺らの身長差でしたらもはや宇宙人の連行だろ。あともちさんに怒られるのはごめんだね」
「先輩が?なんで」
「叶に聞けば。……お前、」



葛葉が私の前髪を払った。目を見開くと、葛葉はふ、と気の抜けた顔で笑う。



「相変わらずマヌケな顔してんな」
「はぁ!?」
「可愛いって意味だよ」
「ずっと思ってたけどそのガバガバな翻訳なんとかならないの!?」
「でもそうだろ?葛葉」
「し〜らね」



悪びれない顔の葛葉は私の首筋に指を滑らした。そのまま数秒間停止して、その手は離れる。



「頑張ってこいよ」



うん。湿った声が空気に溶けて消えた。泣くのはまだ早いから、私は俯きがちに喉を閉めてグ、と口を結ぶ。その時、繋いだ叶の手がするりと離れて、私の頭をぽんと撫でた。そして離れていく足音。え、と顔をあげてその背中を追いかけようとして、



「____A」



ここにあるはず無い声が、私の後ろで弾けた。

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作品ジャンル:ラブコメ
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シィ(プロフ) - きゃーなんて綺麗な声ではなく悶えるような声を発しながら楽しく読んでいたら気づけば無言で涙ボロボロで読んでました。後日談とか勝手に考えてさらにもーッ!!!って気分です。最高でした。 (4月2日 2時) (レス) @page49 id: 45c181e6d5 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 数時間で一気読みしました。長い長い映画を見たような気分で、ずっと泣いています。「二次創作」や「夢小説」の一言で片付けるにはあまりに勿体ないほどの作品でした。本当にこの作品に出会えてよかった! 現世でも来世でも、さくらもちに幸あれ!! (3月28日 23時) (レス) id: 50bb1a18fa (このIDを非表示/違反報告)
紫月とと - 初めて拝見してから一気見をしてもうボロボロと泣きっぱなしでした笑 こんなにも綺麗な恋があるのだろうか、と夢を見させて頂きましたし、何よりも二人の気持ちが尊すぎました😿🤍 さくらもちに永遠の幸あれ! (3月28日 15時) (レス) @page49 id: 5d87268641 (このIDを非表示/違反報告)
なえ(プロフ) - コメント失礼します。今日(昨日)初めて見てそのまま一気見したのですがここまで大号泣した夢小説は初めてです。軽い気持ちで臨んだのに…とてもよかったです。さくらもちお幸せに! (3月25日 1時) (レス) id: a0bf3e5ea8 (このIDを非表示/違反報告)
るるなる(プロフ) - 完結おめでとうございます、今目の前が見えないぐらい号泣しているのですが、、。幸せな気持ちでいっぱいです。長期連載お疲れ様でしたこれからも何回も見返します。そしてこれからも150年も幸せであれ!さくらもち!! (3月6日 21時) (レス) @page49 id: e4083c598e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴた | 作成日時:2023年11月19日 17時

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