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物語 ページ24

にじさんじで過ごした五年間は、決して薄いとは言い難いほど、僕の一部になっていた。そしてAと出逢い日々を重ねたせいで、僕はちょっと考え事をすれば、足は勝手にあの休憩スペースへ向かう。


でも今日、そこにいたのはAじゃなかった。




「来ると思った」
「叶君。なんか、珍しいね」
「そう?……まぁ、」



いつもの数倍歯切れの悪い叶くんは、ペットボトル片手にソファーに腰掛けていた。ぽんぽんと隣を叩かれ、導かれるまま隣に座る。ちょうど良いと思った。彼に言わなきゃならないことが、少なくとも僕にはあった。



「A、卒業するね」
「…………だね」
「僕はずっと、Aのそばには僕がいなきゃって思ってたけど。大人になっちゃったなぁ」



叶くんは僕に語りかけているようで、実際は独り言のような口ぶりだった。なんて返すか倦ねている間に、叶くんは僕に目を向けた。僕が言いたいことが、彼には分かっているみたいだった。脈絡なんて、僕らの間に必要なかった。



「僕は、Aが好きだ」



暫く叶君は何も言わなかった。じ、と僕を見つめるその表情が少しAと似ていて、僕はなんだかなぁと思った。そしてふ、と叶君が挑発的に微笑む。



「僕も好きって言ったら?」
「残念ながら失恋かな」
「ふは!僕は失恋しないよ。だって、Aも僕のこと大好きだし、僕の好きは恋愛感情なんて比じゃない。もっと大切で、150年前からずっと変わってないからね」



150年、それに引っかかる僕を彼は見透かしていた。そして動く口の行先を、どうしてか僕は予想できた。



「150年前のこと、もちさんは思い出した?」



悔しながらに首を振る僕に、叶くんはやっぱりと言いたげな表情で笑う。細めた瞳の先にいるのは僕だろうか。それとも、その150年前の僕とやらか。でも今ここにいるのは、間違いなく僕だった。



「ふは、そりゃそうだ。だってアイツ、150年後の自分にさえ嫉妬するようなヤツだったから」
「え?」
「……自分だけのAにしたかったんだ。でもそれは、今のもちさんもあんまり変わんないかな」



叶くんはふと遠くを見つめる。そして、また僕に視線を戻した。



「僕はそれが気に食わないから、教えてあげる。もちさん、いいや一途なヴァンパイアハンター。連れ去られた聖女様を求め、敵に勇敢に立ち向かった獣人」



150年前。出逢うべくして出会った君と、Aの物語を。






チリチリ、金属が擦れる音が耳元で鳴った。

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作品ジャンル:ラブコメ
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シィ(プロフ) - きゃーなんて綺麗な声ではなく悶えるような声を発しながら楽しく読んでいたら気づけば無言で涙ボロボロで読んでました。後日談とか勝手に考えてさらにもーッ!!!って気分です。最高でした。 (4月2日 2時) (レス) @page49 id: 45c181e6d5 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 数時間で一気読みしました。長い長い映画を見たような気分で、ずっと泣いています。「二次創作」や「夢小説」の一言で片付けるにはあまりに勿体ないほどの作品でした。本当にこの作品に出会えてよかった! 現世でも来世でも、さくらもちに幸あれ!! (3月28日 23時) (レス) id: 50bb1a18fa (このIDを非表示/違反報告)
紫月とと - 初めて拝見してから一気見をしてもうボロボロと泣きっぱなしでした笑 こんなにも綺麗な恋があるのだろうか、と夢を見させて頂きましたし、何よりも二人の気持ちが尊すぎました😿🤍 さくらもちに永遠の幸あれ! (3月28日 15時) (レス) @page49 id: 5d87268641 (このIDを非表示/違反報告)
なえ(プロフ) - コメント失礼します。今日(昨日)初めて見てそのまま一気見したのですがここまで大号泣した夢小説は初めてです。軽い気持ちで臨んだのに…とてもよかったです。さくらもちお幸せに! (3月25日 1時) (レス) id: a0bf3e5ea8 (このIDを非表示/違反報告)
るるなる(プロフ) - 完結おめでとうございます、今目の前が見えないぐらい号泣しているのですが、、。幸せな気持ちでいっぱいです。長期連載お疲れ様でしたこれからも何回も見返します。そしてこれからも150年も幸せであれ!さくらもち!! (3月6日 21時) (レス) @page49 id: e4083c598e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴた | 作成日時:2023年11月19日 17時

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