変わらぬ日々を ページ15
心臓がどくどく音を鳴らす。配信が終了しても私は高揚感が邪魔して中々椅子から立ち上がれなかった。結果は準決勝敗退。ちゃんと走りきって、敗退。……んは。
｢ちゃんと悔しいなぁ｣
これで満足するような人間じゃなくて、心底よかった。毎日毎日練習して、マリカ杯直前は大学以外の時間を殆どこれに詰め込んで、掴み取ったのは優勝の二文字っていう少年漫画みたいにはなれない。ちゃんと敗北だ。優勝以外全部負けだ。……それでも、無駄とは思わない。
｢やり切った。やりきった！私の五年間、ぜんぶ使い果たした！！！｣
パソコンに反射して映るライバー衣装の私。あとはこれにお別れを告げるだけ。先輩に言って、やっと一区切り。……葛葉ボコボコにできなかったや。アイツを倒して、私は大丈夫って言ってやりたかったのに、なぁ。机にうつ伏せると、脱力感が私を虜にした。
なんだか、考えている間に酷く眠くて。瞼を閉じるとそこにいた葛葉が、私を小突いた。
・
ぴんぽーん。その呼び鈴に目を開けると、付けっぱなしの電気が瞳を刺激した。回らぬ頭は正常に機能せず、脊髄が勝手に体を動かす。はい、とインターホンにガラガラの私の声が吸い込まれた。
『やっぱり寝てた？』
｢ん、はい。寝て、ましたぁよ？｣
『おはよ』
……刀也先輩？するりと言葉が飛び出て、私はやっと目が覚めた心地がした。正常に機能した脳は全ての神経を足に集中させて私を動かす。バタバタと慌ただしい音と共に、私は玄関のドアを開けた。
そこにいたのは。分かっていたのにポカンと口を開けてしまった私に、愛しい人はおかしそうに笑う。150年前からずっと、私が一番好きな表情だった。
｢ほんとに刀也先輩だ｣
｢うん、本物の剣持刀也。マリカ杯お疲れ様｣
｢それは先輩の方じゃ……｣
いつかのデジャブみたいな会話だった。嬉しいやら悔しいやら、全部がごちゃ混ぜになってしまって、これ以上の言葉が出てこない。代わりに一粒、私の感情を代弁してくれる雫が頬を滑った。
｢良い走りで、良いレースだったよ｣
｢、｣
今も昔も先輩は変わらない。微笑む先輩への最適解がこれじゃないとは分かっていたけど、それでも私は言葉にしてしまう。だって、悔しかったから。
でも、私は。優勝したかったです。
僕もって先輩が返した。頭を撫でられて、その冷たい指先に愛しさだけが募る。……だめだなぁ、私。
いつまでもこの人に寄りかかったまんまだ。
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シィ(プロフ) - きゃーなんて綺麗な声ではなく悶えるような声を発しながら楽しく読んでいたら気づけば無言で涙ボロボロで読んでました。後日談とか勝手に考えてさらにもーッ!!!って気分です。最高でした。 (4月2日 2時) (
レス) @page49 id: 45c181e6d5 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 数時間で一気読みしました。長い長い映画を見たような気分で、ずっと泣いています。「二次創作」や「夢小説」の一言で片付けるにはあまりに勿体ないほどの作品でした。本当にこの作品に出会えてよかった！ 現世でも来世でも、さくらもちに幸あれ！！ (3月28日 23時) (レス) id: 50bb1a18fa (このIDを非表示/違反報告)
紫月とと - 初めて拝見してから一気見をしてもうボロボロと泣きっぱなしでした笑 こんなにも綺麗な恋があるのだろうか、と夢を見させて頂きましたし、何よりも二人の気持ちが尊すぎました😿🤍 さくらもちに永遠の幸あれ！ (3月28日 15時) (レス) @page49 id: 5d87268641 (このIDを非表示/違反報告)
なえ(プロフ) - コメント失礼します。今日（昨日）初めて見てそのまま一気見したのですがここまで大号泣した夢小説は初めてです。軽い気持ちで臨んだのに…とてもよかったです。さくらもちお幸せに！ (3月25日 1時) (レス) id: a0bf3e5ea8 (このIDを非表示/違反報告)
るるなる(プロフ) - 完結おめでとうございます、今目の前が見えないぐらい号泣しているのですが、、。幸せな気持ちでいっぱいです。長期連載お疲れ様でしたこれからも何回も見返します。そしてこれからも150年も幸せであれ！さくらもち！！ (3月6日 21時) (レス) @page49 id: e4083c598e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2023年11月19日 17時
