四月の馬鹿ども、w【fsm】

認めて ページ36

好きな人が私の事を好きって、そんな都合の良いこと。



｢Aちゃん｣



私の人生で起こるワケがない。



｢ふ。顔、強ばってる｣
｢あ、えっと、｣
｢君はまず自分が幸せになる事を、自分自身で許してあげなきゃダメなのかもなぁ｣
｢そんなこと｣
｢いいや、そうだ。君が誰に対しても一線を引いてしまうのも、俺が君を好きなのを素直に認めようとしないのも、全部、君が君を縛ってしまっている。………ピスサイ君にそういうのが無いのは正直言って妬ましいが｣



ガク君の言葉に、私はやっと不思議なくらい当たり前であると認識していたそれの異端さに気づいた。そういえば、彼には最初から私のままだったのは何故だろう。喋りかけたのはそれなりに喋れる自信があったから。上っ面だけは良いからそれなりの関係を築くのは得意。でもそれ以上はどうにも上手くいかない。……ピスサイ君以外。気がつけば、彼は。



『友だちじゃんか』



狭まった二重幅、半開きの唇、桃色の頬。天邪鬼なくせに顔によく出る彼は、私の前で一切の取り繕いをしなかった。取り繕ってばかりの私は、確かに彼の言葉に救われた事があって、………救ってくれたのはガク君も同じなのに。出会う順番が違っていたら、もしかしたら。彼を見つめる世界線もあったのかなぁって、それを認めてもいいのかもしれない。それを認めたら、もう何でも認められる、かも。



｢ふは。………ガク君。私がピスサイ君と仲良いの、ヤですか｣



彼は数秒開けて、ちょっとだけと頷いた。



｢私がこんなにガク君のこと好きなのは、あなたが私を救ってくれたからです。あなたの配信が私の生きがいで、希望だった。あなたさえいればいいって本気で思ってる時期もありました｣



ガク君重すぎてびっくりして引いちゃうかな。でもいいや。私の世界はもう、ガク君だけじゃないから。このおぞましい恋心を認めてくれる人が、一人でもいるって分かっていれば、私はそれだけで立っていられる。



｢ピスサイ君はそんな私を、認めて、手を引いてくれたんです。だから私は絶対にその手を離すつもりはありません。あの温もりを失うくらいなら、私は、何を捨ててでもピスサイ君を選びます｣









ガタッ！！！







それ惚れた男に言う事じゃないでしょ。あの子ってばなんでそんなに……



馬鹿なのって消え入りそうな声に振り向けば。素知らぬ顔をしたマスターの隣に、頭を押さえたピスサイ君が項垂れていた。

新風→←爆

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