四月の馬鹿ども、w【fsm】

友 ページ30

初めてAちゃんを見た時、可愛い子だなって思った。



『恋愛感情より、私は友情の方が強いと思うけどなぁ。だって恋人だと別れたらそれで終わりだし、ちょっと会話も無くなって会わなくもなったら自然消滅って名前が付くでしょ？でも友だちは喧嘩別れしない限りずっと友だちじゃん。何年何十年会えなくたって互いが覚えている限り、ずっと。私はそっちの方が素敵だと思うし、他人の恋愛感情よりは信じられるけどな』



Aちゃんは誰とでも線を引きたがる子で、そんな彼女の一番近くにいるのは俺だという自負があった。だって俺を見ると嬉しそうに駆け寄ってくれて一番に相談相手に選んでくれるし、誰よりもずっと近い距離にいることを許してくれていたから。俺もそれが心地よかった。誰にも懐かない野良猫が懐いてくれるってこんな感じかな、とか一人優越感に浸っていた。



………だから、ずっと俺だけに懐いてればいいのにって、そんな事願ったから天罰が当たったんだ。



そっと覗いた彼女の配信で、初めて彼女は隠してきた本音を少し漏らす。彼女の根底に存在する価値観は浮かれきった俺を揺るがすには十分で、そして。踏み越えてはならぬ一線を俺は認識したのだ。



彼女の特別に永遠にいる為には友情を持って。Aちゃんの友だちでいることが最前である事を俺はあの日知った。そうすれば俺は彼女を失わずに済むって、そう俺は答えを出して、心底安心したというのに。









｢お菓子とかないの？｣



ねぇよ、と心中で独りごちる。声は出ないからピースサイン君はきっと無視されたと思っているだろう。それで構わない。目の前で茶を啜るコイツを感情任せに殴るのは簡単だ。……けれど、そうすればきっとAちゃんは泣くだろう。コイツの為に彼女がまた涙を流すなんて虫を触る事よりずっと不快だ。



｢………何が話したくて来たんだよ｣
｢最初に言ったじゃん。僕が助けてあげるって｣
｢あ？｣
｢………紫牙A、にじさんじ辞めるって｣



、声が出なかった。なんで、どうして急に、とか原因は分かっているのにその他の可能性を探してしまう。そんな俺を嘲笑うかのようにコイツはふ、とムカつく顔で鼻を鳴らした。



｢僕だってそれは不本意だよ。あの子の配信好きだし。…伏見ガクだって好きでしょ？……あぁ、もしかしたら君は配信よりその本人の方が好きだったりするのかな｣



………黙れよ。



思わず含まれた怒気にも、コイツはニヤリと笑うだけだった。

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