天秤 ページ29
すぅ。右肩が重くなってか細い寝息が耳に届いた。だらんと垂れた右手に握られたプロコンと、停止したキャラクター。僕はそっと隣を抜け出して彼女を抱き抱える。
｢………辞めなきゃいいのに｣
君の配信見るの、結構好きだったのになぁ。出来るだけ丁寧にベッドに寝かせて少し寝顔を眺めてから、僕は玄関に向かった。時刻は丑三つ時、外はまだまだ真っ暗だ。返ってきたパーカーを羽織り、僕は音を立てないようにして扉を開ける。
他人の為に何かをするなんて柄じゃないけど、……友だちの為に一肌脱ぐくらいはしてあげるよ。
もしこれがどうにもならなくても、僕がずっとそばにいてあげる。紫牙Aはきっと何十万のリスナーより僕の方が好きだし、………僕もそこら辺のリスナーよりあの子の事を大切に思ってる、から。
･
ピンポーン。間の抜けた音の数秒後に、ガチャリと鳴った。はい、と酷い声は、配信になんか載せられやしないだろう。
｢ヤッホー、伏見ガク。……僕のこと覚えてる？｣
忘れられてはいない事は分かっているが、本人を目の前にするとどうにも不自然な言葉ばかりを選んでしまう。うんともすんとも言わないインターホンに、今度は挑発的な言葉をわざわざ選んで声に出した。
｢……紫牙A、今僕の家で寝てるんだけど。……何してたか知りたい？｣
………殺す。ってボロボロの声で言うもんだから、僕は思わず笑いそうになる。なんでそこまですり減らしてるクセに捕まえておかなかったんだろうって思った。まぁ僕の知ったこっちゃないけど。
｢多分君はもう二度と紫牙Aに会えないだろうから、……柄じゃないけど僕が助けてあげるよ。君が会いたいならだけどね。……………返答無いなら帰るよ。3、2＿＿＿＿｣
1、って言う音と扉が開かれる音が重なった。
｢………入れ｣
今にも僕を殺しそうな目で伏見ガクは唸るように言った。……似てるのは見た目だけって、僕でもそう思う。一体紫牙Aは伏見ガクのどこを好きになったのだろう。こんな人を殺しそうな人間、僕なら嫌だね。
『あのね、ピスサイ君。今日ガク君がね、』
でもきっと、あの笑顔を引き出せるのは伏見ガクしかいない。伏見ガクに盲目的に恋してしまった馬鹿な女の、……笑顔を僕は好きになってしまったから。
重くて良いじゃんって僕は思う。だって僕も重いから、君も重くないと釣り合いが取れないじゃん。
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あやせ - 完結おめでとうございます！面白くて大好きです！ (3月7日 8時) (
レス) @page43 id: 22218ac678 (このIDを非表示/違反報告)
利き手(プロフ) - あぁ...タイトル回収......完結おめでとうございます！！すごく！！すごく面白かったです！、！！！！ (8月20日 9時) (レス) @page44 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
ラク - 完結おめでとうございます！！fsmもpssiも作品があまりなかったので最高の作品に出会えて嬉しいです！素晴らしい作品をありがとうございました！ (8月14日 23時) (レス) @page44 id: b973ae7cca (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - ハルトさん» 楽しんでいただけて何よりです〜！長い間ありがとうございました！過去にも何度もコメントして頂けていて、心の支えでした……こちらこそありがとうございました〜！ (8月14日 21時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 落ち椿さん» コメントありがとうございます！初期の方からずっと見ていただけて、とても嬉しいです。fsm夢はもっと増えてほしいですよね！笑。嬉しいお言葉本当にありがとうございます〜！ (8月14日 21時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴた
| 作成日時：2023年4月9日 19時
