沈没 ページ25
「……………は、」
驚きと、そして僅かな苛立ちが短く吐いた息に乗った。言葉を失った私に、ガク君は私を説得するかのように詰め寄る。
「君は優しくて素直だから、きっと、そうだよ」
「ッ違います」
「違わない」
「違う!」
それに弾かれたように目を見開いたガク君は、私の瞳を開かれた動向で注視する。絞り出すような声で私の肩をまたひとつ強く掴んだ。ピスサイ君のパーカーの肩の部分はきっとぐしゃぐしゃに跡がついているだろう。
「ピスサイ君に最初に話しかけたのは私です。それに、ピスサイ君は騙すとかそんな器用な事出来る人じゃありません。……そんな事、あの子に言わないでください」
こんなこと言いたくないのに、嫌われちゃうのに。なんで私はこんなにムキになってるの。ガク君だけで良かったじゃん。ピスサイ君だって、離れたらそれきりって思ってたのに。なんで私は。………こんなに彼を守ろうとしてるんだろう。
『友だちじゃんか』
まぁ、うん。そうだね。ピスサイ君が私にとっての特別だから、そうなるよね。毎年四月に馬鹿なことやっちゃう馬鹿だけど。人気欲しさに配信乗っ取って罵られて、それでも配信を辞めない大馬鹿者だけど、私だけは彼を笑えないの。四月の馬鹿は強欲な方がお似合いだから、そんな彼のそばにいたら私も肩の力が抜けるの。
それだけは、ガク君にも否定させてあげられない。
私は拳を握りしめる。そんな私にガク君はわなわなと肩を震わせて、それから一オクターブ下がった声色で、私を怖い瞳に映した。
「………もしかして。君はピスサイ君の事が好きなのか?」
「…………はぁ!?」
「もう次を見つけたの?それとも俺はダメだったから、俺に似てるピスサイ君がいいの?」
それに思わず右手を振り上げて_____宙で制止する。彼は殴られそうになっても尚、私から手を離しはしなかった。
何を言っても彼には伝わらないって悟ると、目元がぎゅうと収縮して、それから熱い塊がボロボロ溢れた。私は、ガク君の容姿が好きだから好きになったんじゃないのに。なんで貴方は分かってくれないの。貴方だから、私は好きなのに。貴方の代わりなんて誰もなれやしないのに。ずっと好きでいていいですかって、身勝手な心でも、貴方に私を忘れてほしくなくて頼んだのに。
すぐ次を見つけられるほど、そんな軽い気持ちで貴方を好きになったんじゃないのに。
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あやせ - 完結おめでとうございます!面白くて大好きです! (3月7日 8時) (レス) @page43 id: 22218ac678 (このIDを非表示/違反報告)
利き手(プロフ) - あぁ...タイトル回収......完結おめでとうございます!!すごく!!すごく面白かったです!、!!!! (8月20日 9時) (レス) @page44 id: fbcc91bb13 (このIDを非表示/違反報告)
ラク - 完結おめでとうございます!!fsmもpssiも作品があまりなかったので最高の作品に出会えて嬉しいです!素晴らしい作品をありがとうございました! (8月14日 23時) (レス) @page44 id: b973ae7cca (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - ハルトさん» 楽しんでいただけて何よりです〜!長い間ありがとうございました!過去にも何度もコメントして頂けていて、心の支えでした……こちらこそありがとうございました〜! (8月14日 21時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
ぴた(プロフ) - 落ち椿さん» コメントありがとうございます!初期の方からずっと見ていただけて、とても嬉しいです。fsm夢はもっと増えてほしいですよね!笑。嬉しいお言葉本当にありがとうございます〜! (8月14日 21時) (レス) id: 2515d01abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴた | 作成日時:2023年4月9日 19時