四月の馬鹿ども、w【fsm】

二人ぼっち ページ21

ピスサイ君についてきた先は本当に人っ子一人いなかった。よく大学内でこんな場所を見つけられたものだと素直に感心する。



私は地べたに体操座りをして、ピスサイ君はその隣で片膝を立てて座った。お尻汚れるよって言えば、君が動くなら動くよって言う。じゃあ動かないって返せば、彼は呆れたような視線を私に向けたけど、何も言わなかった。



｢………ピスサイ君、｣
｢なに｣
｢同じ大学なら早く言ってよ｣
｢…………別に言う必要なくない？｣
｢あるよ｣



私は二度、強く念押しして彼を見る。そうしてやっとピスサイ君はやっと私を見て、少し色づいた頬が薄暗い教室でもよく分かった。



｢友だちじゃんか｣



初めて言葉にして、とっくに特別になった彼の瞳を射抜く。歳をとるにつれ言わなくなるそれは、年齢が関係なくても私の人生においてそう何度も登場するものではなかった。捻くれ者の私はそうやって曖昧な関係を言語化するのを嫌っていたから、もしかしたらハッキリ口に出したのはピスサイ君だけかもしれない。



｢………君って、なんでそんなに伏見ガクがいいの｣
｢ダメな理由なんてあるの？｣
｢さっき君に告白した人、大学のミスコン優勝してたヤツだよ｣
｢ガク君じゃないんだ｣
｢伏見ガクはまずエントリーしてないし｣
｢みんな見る目ないなぁ｣
｢一般的に考えれば見る目ないのは君の方だけどね｣
｢……………そんなことないよ｣
｢！、…………ごめん僕が悪かったってば｣
｢ゆるさない｣
｢ごめんってば、｣
｢………ぷ。あはは、焦った顔してやんの｣
｢なっ！？、泣き真似とかずるくない！？｣





………あはは。





上手く笑ったはずなのに、ピスサイ君は眉を八の字にしてまた一つ謝る。視界がぼやけてよく見えない。スンと鼻が鳴って、瞬きをすると頬が冷たく濡れた。

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