四月の馬鹿ども、w【fsm】

カタオモイ ページ1

好きに理由なんか無いって思う。だって好き自体が理由に成り得るのに、それにワケなんて求める方が間違えてるとは考えないのかな。







｢おはよAちゃん！｣
｢！、おはようガク君｣



ガク君の元気でカッコイイ声が私に向いているってだけで心が踊る。明るくて友だちも多い彼は、いつも輪の中心で色んな人から引っ張りだこ。それでも私を認識してくれてあまつさえ友だちって言ってくれるんだから、罪な人だ。私は下心で貴方に近づいたのに。



｢あ、｣
｢ん？なにか＿＿｣
｢桜の花びら付いてるぜ！………ほら、｣



私の髪に触れた貴女の手が愛おしくて、そんなわけないのにもう一生髪の毛洗わないって思ってしまう。摘まれた花弁の淡い色が、私に移ったみたいに染まる頬を隠しながら、彼からその花弁を受け取った。



｢はは、Aちゃんってこういうの似合うな｣
｢へ！？そ、うですかね……｣
｢うん。女の子って感じで可愛い。＿＿＿あ、呼ばれたから行くな！またねAちゃん｣



私の返事も聞かずガク君は呼ばれた方向へ走り去る。……私は未だ彼が言った可愛いを脳内で噛んで噛んで噛み砕いて、やっと消化された頃には、ガク君の背中さえ見えなくなっていた。



好き。ガク君、好き。大好き。



花弁が破れてしまわぬよう慎重にその皺を伸ばして、パクン！口の中に放り込む。小さすぎて味はしないけれど、鼻を抜ける甘い香りとその感触を舌で味わいながら飲み込んだ。



……私以外の、誰の物にもならないで。ガク君。



私のおぞましい恋心ごと、この花びらみたいに。貴方に食べてもらえないかなぁ。

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