My HERO 2【短編集】

ロードショー…首藤義勝 ページ1

雨上がりの空はまだ太陽を隠している




ベースを守りながら傘を指す手間が無くなって内心喜びながら、家路を辿る足はビデオ店に向かっていた


金曜日の夜は君と映画を見るのが日課になっていた


誰が決めた訳でもないけど、君は仕事が早く終わる金曜日にいつも観たい映画を借りてくるから
俺も自分の観たい映画を選んで帰るようになった




「ただいま」


『おかえりー』




キッチンから声が聞こえる

生姜のいい匂いがして思わずお腹が鳴りそうになった




『ベース大丈夫だった？』


「Aがめちゃめちゃでかい傘貸してくれたから平気だった」



良かった良かったと言いながら出来上がった料理をテーブルに運び始める


7時の夕食
2人揃ってこの時間にご飯を食べられるのは金曜日だけだ


雨で体冷えたと思うから
って
生姜の入った暖かい鍋を食べた


俺がにんじんをよけて食べてたら
ちゃんと食べなさい
って皿に入れられた

子供じゃないのに
にんじんをよけて食べる方がよっぽど子供か




「今日はAの好きそうな映画借りてきた」


説教が終わらないうちに話し始めた


『え、なになに！』


もう自分が何に怒ってるのかすら忘れてしまったようにきらきらした目をこちらに向けていた

そういう所が好きなんだ



「ご飯終わってから見ようね」



そう言うとAは決まって颯爽とご飯を食べて片付けを始める
洗い物は俺の担当で、その時間でAがお風呂に入って
俺が風呂に入ってる時間はAが二人分のコーヒーを入れてくれる


時計はちょうど9時を指した


『ロードショーの時間とぴったりだ』
嬉しそうにAが呟いた



自宅のソファに座っているはずなのに

君と映画を見る時はまるで映画館の中のように感じるのがいつも不思議に思うことだ




今日は昔1度だけ見たことがある映画を選んだ

どうしても主人公の結末が思い出せなかったから



「これ、最後主人公がどうなるんだっけな」



『なんだっていいよ
ハッピーエンドなんて映画の中だけだしさ』




冷たいこと言うなあ
それでも女かい


って言ったら、きっと今日1番の鉄拳を喰らいそうだから心の中だけにしておいた



Aはハッピーエンドの映画を嫌がる

どうしてか聞いたら
ハッピーエンドって何か分からないから
と言っていた


俺にはそれがよく分からなかったけど
まあいいや
そんな今が好きなんだ



『何してるの
早く見よ』


「はいはい」




エンドロールが流れないように

少しずつどうでもよくなる…佐々木→

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