13 ページ16
･
揺れる空気に鮮やかな赤色のユニフォーム、動く度に舞う砂埃。そのどれもが彼のために用意された演出のようだった。
少し傾いた日はスポットライトとなり、彼を照らす。
鬱島の知り合いで声のでかい彼は無駄に目立っていた。…
放課後見かけてふらりと立ち寄った運動場では、サッカー部が練習をしていた。
次々と繰り出されるドリブル!見る者を圧巻するスピード!
そして何故か私の隣に平然と居座っているチビ。なんだこいつ。
突然隣に座ってきたと思ったら当たり前のように模擬戦を観ながら点が入る度感嘆の声を漏らしてこちらをチラチラと見ている。
なんだこいつ。
故に私は視線に気付かないふりをして顔を真っ直ぐにし観戦していた。
運動場の隅に設けられたベンチは他にも幾つかある筈。わざわざ私の隣に座る訳が分からなかった。
自販機で買えるジュースまで手渡されたのに対して会話がないと言うのも不思議でしょうがない。
彼は廊下で少し顔を見るくらいで、話したことすらなかったというのに。距離の詰め方が分からないのだろうか。
少し視線を下に下げてペットボトルに目をやった。
夏を彷彿とさせるラベルには弾ける炭酸のイラストが描かれ、特徴的な字体ででかでかとロゴが印刷されている。
彼が手にしている飲み物は私と違った、紙パックのものだった。私の分の飲み物まで選んで無言とは。
……余程の馬鹿なのだろうか。こわ。
というか私自身そろそろ帰りたいのである。幾らジュースがあろうと外は蒸し暑く、汗がとりとめなく流れている。
rb「…暑いし、場所変えへん?」
『え?』
突然口を開いた青年に驚き声を上げると彼は肯定だと受け取ったのか少し遠慮がちに立ち上がった。
さっさと歩き始める彼の背中が遠ざかる。
……おくちあったんですね。くそがき。
そして案内されたのは冷房がガンガンに効いた放送室だった。
変えれる場所があったんだったらはよ連れてこいや!!!!!
この時点で私はこめかみピクピクどころじゃなかったがそんな私を知ってか知らぬか彼はこの場所についての説明をし始めた。
rb「俺放送部やから、いつでも入れんねん。…ここなら運動場も見えるやろ」
そう言って彼が指差したのは放送室に設けられた窓で、試しに覗いてみると少し離れた場所で練習する運動部の姿が見える。
別に執着するほど観戦したい訳では無かったが何せ冷房が効いた放送室はさながら天国の様だった。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←12
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 161人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちご飴(プロフ) - 豚肉さん» コメントありがとうこざいます！！主人公の性格、こだわったので気付いていただけて嬉しいです🔥 (3月10日 12時) (
レス) id: 13fdf00f22 (このIDを非表示/違反報告)
豚肉 - タイトル詐欺も主人公の性格も大好きです……！凄く面白いです！応援しています！！ (3月10日 9時) (レス) @page13 id: 144a6ab78e (このIDを非表示/違反報告)
いちご飴(プロフ) - 天さん» これからもお空から見ていて下さい…😊 (3月9日 19時) (レス) id: 13fdf00f22 (このIDを非表示/違反報告)
いちご飴(プロフ) - ねむ??さん» 気付いてくれて嬉しいです✌️ (3月9日 19時) (レス) id: 13fdf00f22 (このIDを非表示/違反報告)
天(プロフ) - あ……最高です……(遺言) (3月9日 19時) (レス) @page7 id: 16271c9107 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
