#30 ページ33
目が覚めれば、病院の天井。
たくさんの機械の音が聞こえてくる。
腕に刺さる数本の針。
もはや、どこに繋がっているのか分からない、チューブ。
目が覚めて一番に思ったこと。
それは…
「お兄…ちゃ…ん…」
幸い私の誇りである喉は、異常はない。
ちょっと違和感があるものの、すぐ慣れてきた。
それより、お兄ちゃんはどこだろう。
もしかして…
なんてことが頭をよぎる。
「嫌…。嫌だっ!お兄ちゃんっ!」
精一杯の声を出す。起き上がろうとするけれど、体が拒否をして、激痛が襲う。
でも、そんなことはお構い無しに叫ぶ。
「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ!」
そ「っ…凛…?」
「お兄ちゃん…?お兄ちゃんっ、何処?!何処にいるの?!」
周りはカーテンで仕切ってあって、見えない。
ギシッ!
ベッドの音が隣からしたと思って、急いで見る。
シャー…っと、カーテンが開き、お兄ちゃんの姿が見えた。
私の前で泣いたことがないお兄ちゃんが、ポロポロと涙を流しながら、点滴の針を腕に刺したまま、立っていた。
そ「ほんとに…凛なの…?…ねぇ…。」
すっかり放心状態のお兄ちゃんに、私も泣きながら答える。
「うんっ!私だよっ…お兄ちゃんっ!」
動かない体をこれ程憎んだことはないだろう。
無理やり両手を寝たまま、お兄ちゃんに向けて広げた。
お兄ちゃんは、何かが切れたかのように、私に抱きついてきた。
体が悲鳴をあげたけど、その時の私は気にしなかった。
そ「よかった…ほんとに良かった…凛が死んでたら…俺、っ…」
「大丈夫、大丈夫…私、お兄ちゃんを置いて逝かないから…ね?」
なんだか今だけ…、この瞬間だけ、お兄ちゃんが私より幼く見えた。
その後すぐに看護師さんが来て、お兄ちゃんと私はお互いのベットに行くよう、引き離された。
看護師「声がしたかと思って来てみたら、重症なのに、何やってるんですか!?」
「…ごめんなさい…。嬉しくて…つい。」
そ「看護師さん、凛は俺より怪我酷いですよね…。起き上がれないくらい…。」
看護師「…そうですね。彼方さんは、頭を軽く打っていて、足の打撲に、右肩の脱臼です。彼方さんもかなりの重傷ですが…、ご両親が抱きしめる形で守られていたので、命は助かりました。」
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\(^o^)/ - 黒木和牛じゃなくて黒毛和牛では… (2019年12月6日 16時) (レス) id: 2500b8fb94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーたん - 雨宮の雨違うよ!雨じゃなくて天だよ!! (2018年9月7日 5時) (レス) id: 04102c179e (このIDを非表示/違反報告)
髑髏(プロフ) - ふわりさん» うん!タメで大丈夫!ありがとうヽ(*´∀`)ノ いえいえ、コメントくれて、こちらこそありがとうです!それは良かった(*⌒▽⌒*) 全然大丈夫だよwww (2018年4月9日 0時) (レス) id: b9b1446492 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり - なんかどっかにタメでいいってかいてあったんでタメで話すね← まず、完結おめでとう!そして前のコメ返しありがとう。マジ嬉しかった そしてなんか上から目線ぽくてすまん← (2018年4月9日 0時) (レス) id: 6b0daac0a7 (このIDを非表示/違反報告)
髑髏(プロフ) - 夏希さん» ありがとうございます!!!!!これからもよろしくです(*⌒▽⌒*) (2018年3月17日 11時) (レス) id: b9b1446492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:髑髏 | 作成日時:2017年7月24日 10時