視える系女子、異世界で奮闘してます【twst】 (ページ6)

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sin,5 ページ6

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可笑しい。人の声が真上から聞こえてくるなんて。恐る恐る顔をあげれば、ドアップで黒髪の美少年の顔があった。

『ひっ?!』

「おぉ、すまない。驚かせてしまったようじゃ」

黒髪少年の手が伸びてきて、私の頭を数回叩いた。驚く私の顔が丸い瞳に映ったかと思うと、少年はヒラリと猫のように床に着地する。

その場にいた人達と言葉を一言二言交わすと、黒髪少年は生徒を案内して行った。人が去って行き、私とクロウリーさんの2人だけになる。

「さて、Aさん。貴方には、この学園を出ていってもらわなければいけません」

クロウリーさんが言うには、この鏡の前に立てば元の場所へと帰れるらしい。色々と巻き込まれて文句を言いたいが、堪えよう。

「さぁ闇の鏡よ！この者をあるべき場所へ導きたまえ！」

シン。クロウリーさんの言葉に、鏡は何も答えない。ひとつ、咳払いをしてまたクロウリーさんが繰り返す。

「どこにもない……」

『は？』

鏡に言われた言葉に、私の口から思ったより間抜けな声が出た。私を他所に、闇の鏡とやらは続ける。

「この者のあるべき場所はこの世界のどこにも無い……無である」

鏡の言葉に、気が遠くなる感覚がした。つまり、私は帰れないのだろうか。夢ならば覚めて欲しい、切実に。

「そんなことありえない!!あぁ、今日はありえないのオンパレードです！」

クロウリーさんが嘆くが、こっちが泣きたい。頬を思いっきり引っ張るが、悲しきかな。ちゃんと痛い。

「……何してるんですか、貴方。それよりも、貴方一体どこの国から来たんですか？」

『うっ、……日本です』

「ニホン？」

見られていたみたいで、羞恥心が芽生える。慌てて、クロウリーさんの質問に答えるとさらに首を傾げられた。

「そんな地名は聞いたことがないですねぇ」

『は？日本ですよ？ジャパニーズ!!』

「知りませんねぇ。私、生徒の出身地は全て把握していますがそんな国聞いたことも見たこともありません」

クロウリーさんの言葉に、私は絶望した。ｰｰあんた達、思いっきり日本語喋ってるじゃん!!

「少し、調べてみましょう。着いてきてください」

それでも、私に何か文句を言える勇気もなく歩いていくクロウリーさんの後をついて行くしか無かった。

(私、帰れるよね？何かの間違いだよね？)

見上げた月は青くて、更に私の心を不安にさせる。