少女よ、咲き誇れ 【鬼滅の刃】

炎がふたつ ページ32

煉獄side


「心配してくれるのは嬉しいが、俺はこれでも柱だ。この程度の傷を気にしていたら人々を鬼から守るなどもってのほか!!」

そうだ。俺達は、罪なき人々を守らなくてはいけない。強き者は、弱き者を守りなさい。母上がよく言っていた言葉だ。


『何故、柱というだけで自分の命を優先してはいけないんですか？』


俺の言葉に、神羅少女が不満そうな顔をした。


『どれだけ強くても、怪我をしたら痛いと感じるのは皆同じですよ』


そう言って、俺の肩に触れた少女の手はボロボロだった。

青く腫れ上がり、所々血も出ていた。左腕も恐らく折れている。
……君の方がよっぽど、重症じゃないか。


「そんなこと初めて言われたな!!」

『だったら、これからはもう少し自分の命に優しくしてあげてください』


困ったように笑った少女に、何故お館様があそこまでこだわっていたのかわかる気がした。


「ハッハッ！面白いな"A"は!!」


Aは俺が突然名前で呼んだことに、驚いたようで目を大きくさせていた。


「俺は君が気に入った！だから、名前で呼ぶ！俺のことも杏寿郎でいい！」


2人の時は敬語も無くしていいぞ！と俺が笑うとAはキョトンとしてから嬉しそうに笑った。


『敬語は恐れ多くて外せませんよ！杏寿郎さん』


名前を呼ばれた時、じんわりと心が暖かくなるのを感じた。


「A、死ぬのが恐いか？」


Aが直ぐに、はいと答える。


「俺が守ってやると言ったらどうする？」

『ぜひお願いしたいですね』


即答したAに、では俺の継子になれ！と俺が言おうとするとでも、と遮った。


『遠慮しておきます。これ以上、杏寿郎さんは守るべきもの増やしたらまた自分の命大事にしなさそうなので』


それより鬼殺隊辞めた方が早そうだし、とぼそっとAが呟く。


「それは、俺に死んで欲しくないと言っている様に聞こえるが？」

『なんで伝わらないかなぁ……生きてほしいに決まってるじゃないですか』


この時の、Aの困ったような少し悲しそうな笑顔を俺は一生忘れない。

俺はずっと、人々の為に命をかけることが当たり前だと思っていた。

今もこれからもそれは変わらない。
でも、目の前の少女がまた困った顔をするなら少しは自分を大事にしてもいいかと思った。


『思ったんですけど、お館様は柱の皆さんの呼吸を見て学べと言っていたのに別行動したら意味ないですよね』

「ふむ！確かにそうだな！」

『……もうやだ!!この人』

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