少女よ、咲き誇れ 【鬼滅の刃】

花弁がじゅうきゅう ページ23

◆◇


鳩が私の肩で、お呼びであるゥ！と繰り返す。


『………うん！善逸一緒に行こっか！』

「だから、本部に行けって言ってんだろうがァ!!聞こえないフリしてんじゃねェ!!」

『いだっ!!主人つつくとか鳥としてどうなのあんた?!』


くっそ。聞こえないフリして流そうと思ったのに。
てか、この鳩口悪いな?!
え、これと一緒に私はこれからやって行くの？もうすでに、無理だけど。


『ということで、善逸には着いていけない。ごめんね』

「いやだァァ!!Aっ!!」


そう言うと、1人で任務とか無理ぃ!!と涙で顔をぐちゃぐちゃにさせる善逸。

うん。泣きたいのはこっちだよ、馬鹿野郎ぅぅ!!なんなの?!本部呼び出し?!こっわ！
死ぬ死ぬ、行った瞬間柱に切り殺される!!

心の中は荒れながらも、なんとか善逸を説得する。早くしないと、後ろで睨んでる鳩に蹴られる気がするし……。


『善逸なら大丈夫!!善逸はやれば出来る子だって、私知ってるし！』

「お、俺に期待してくれるの……？」


善逸の涙がピタリとやむ。
待って、上目遣いとかめっちゃ可愛い。何この子。


『うん！善逸はこれからもっと強くなるって私、信じてるから！また会った時、私をびっくりさせてよ！ね?!』

「……っ！わかった!!」


私の言葉にしばらく俯いていた善逸はグイッと目元を涙を拭うと勢いよく立ち上がった。
その時に見えた笑顔は、嬉しそうに見えた気がした。

善逸も炭治郎に負けないくらいブンブンと大きく手を振っていて、私は苦笑いをしながら見送った。

……まさか、善逸にもここまで懐かれるとは。

そして、あの猪は挨拶も無しなの?!
2人とは対象的な伊之助に苦笑いがこぼれた。


「早くしろと言ってるだろうがァ！」

『いだっ！ほんっと、可愛くないんだけど?!絶対、焼き鳥にして食べてやる！』


生の呼吸は命あるもの全てに愛されるんじゃないの?!全く愛されてないけど!!

クソ可愛くない鳩を睨みつけながら、鳩が指し示す方向へと歩いていく。

藤の花の咲き乱れる道を通り抜ける足取りはきた時よりも、確実に何倍も重い。

◇


「ここからは、私が貴方をお送りいたします」

鳩に案内されるまま行き着いた場所には、黒い服で目以外の部分を覆っている女の人。

声の高さからして、女の人と判断したけど実際どうなんだろう……？


『えっと、貴方は？』

「隠です。本部まで、私達が貴方を送ります」

『私に帰るという選択肢は？』

「あると思いますか？」


……泣きたい。

花弁がにじゅう→←花弁がじゅうはち

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す