少女よ、咲き誇れ 【鬼滅の刃】

花弁がじゅうに ページ14

◆◇


逃げなきゃ。ここにいたら、私は死ぬ。

こんな鬼に、壱ノ型しか使えないような私が挑んで勝てるわけない。
炭治郎なら大丈夫だ。だって、原作では勝っているから。

でも、私は違う。原作にはないイレギュラーな存在だ。死ぬかもしれない。死にたくない。

クルリと体の向きを変えて、鬼と離れた方向に行こうとする。

__本当に、それで良いのだろうか？


私の目の前をさっきの男の子が通る。


『ちょっと!!炭治郎は、あんたを助けようとしてるんだよ?!』

「だからなんだって言うんだ!!俺は、死にたくないんだ！」


お前だってそうだろ?!
その言葉を否定できなかった。死にたくない、だから逃げる。正しい選択だ。

私やこの子は炭治郎とは違う。何かを成し遂げられる英雄でも、主人公でもないのだ。

ドシャッ!!何かが叩きつけられるような音がして、驚いて振り向けば仰向けに倒れている炭治郎。

ねぇ、炭治郎。君が命をかけて守ろうとした男の子は簡単に君を捨てたんだよ。
人は結局、自分の命が一番大事なんだ。

私だって、そうだ。生きたいんだよ。
きっと、炭治郎は私が逃げても許してくれる。優しいから。

鬼の手が炭治郎にのびる。


___「俺は竈門炭治郎！よろしくなA」


炭治郎の笑顔が浮かぶ。太陽のような暖かいその笑顔。

すぅっと深く息を吸い、吐き出すと軽くなる体。


___生の呼吸 弐の型 月下獸

炭治郎に伸ばした鬼の手が全て切れる。

「なんだァ？お前」

「A?!なんで……っ」

私、生きたいはずだ。死にたくない気持ちは今も変わらない。平穏に生きたい。でも、


『ここで君を見捨てたら私は、君と二度と笑い合えないと思うからさぁ』


「お前、美味そうな匂いがするなァ」


それは、嫌だから。
鬼の目が私を捉え、スっと細くなる。
切った鬼の手が、また直ぐに元に戻る。


『ってことなんで、あのー飴あげるんで見逃してもらえません？』

「A！下からなにか来る!!」


ヘラッと鬼に向けて笑うと、後ろにいる炭治郎から声がかかった。

思わずびっくりして、飛び上がると鬼の手が地面から現れた。サァッと血の気が引く。


『無理無理ぃぃ!!やっぱり無理だよ！炭治郎！』

「A、落ち着け！」


なんで、一緒に飛び上がったのに炭治郎はまだ空中にいるんだろう。

その運動神経の良さに感心していると、炭治郎が鬼の間合いに入った。


___全集中・水の呼吸 壱の型 水面斬り!!


鬼の首が、切れた。

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