少女よ、咲き誇れ 【鬼滅の刃】

花弁がじゅういち ページ13

◆◇


炭治郎が突然、鼻を抑えて顔をしかめた。


『え?!私臭かった?!』

「いや違う!!これは、Aじゃなくて」

「うわァァァ」


炭治郎の言葉を遮るようにして悲鳴が聞こえてきた。
その悲鳴で気づいた。そうだ、ここには化け物がいる。そして炭治郎はそいつと出会う。


「何で大型の異形がいるんだよ!!聞いてないこんなの」


ズズっと何かを這いずるような音共に、その姿が見えた。

……あ、やばい。確実に死ぬわ。

何本あるのかわからない手のひとつに握られている、人間。
鬼がその人間を喰った。バキッ、グシャッ。と、不愉快な音が聞こえる。

幸い、私たちのいる場所は鬼の死角のようで見えていない。

だけど、目の前を横切った男の子は違う。
鬼が手を伸ばし男の子の足を掴む。


「Aは逃げろ」

『え、ちょ、炭治郎……?!』


炭治郎に一瞬、強く手を握られた。
あぁ、どうして。君は、

___水の呼吸 弐の型 水車!!


恐怖に向かっていけるの。
男の子を掴んでいた鬼の手が切れる。

さっきまで、私の隣にいたはずの炭治郎は男の子を庇うようにして鬼の前に立っていた。

鬼の目が今度こそ、炭治郎を捉えニヤリと笑う。

「また来たな。俺の可愛い狐が」

その声は新しい玩具を見つけたように弾んでいた。


「アァァァァ年号がァ!!年号が変わっている!!」


炭治郎に年号を聞いた鬼は、年号が変わっていることに怒り狂っていた。

鱗滝め！鱗滝め！憎悪を含み、しきりに鱗滝さんの名前を連呼する。

そうだ。この化け物を捕まえたのは鱗滝さんだった。江戸時代に捕まり、それからずっとこの鬼は生きていた。

「嘘だ!!」

炭治郎に助けられた男の子がそれを否定する。
ここには、人を２,３人喰ったやつしか入れていないと。

その言葉に鬼は、50人は喰ったと答えた。
寂しくはなかったのだろうか、この藤の花で出来た牢獄でずっと生きることは。

鱗滝さんの弟子は全員喰うと鬼が話した。炭治郎の目が大きく見開かれる。


「そうだなァ。特に印象に残っているのは二人だな。あの二人」

錆兎と真菰のことだ。
ほんとに、この話は原作を知ってても不快になるな。

この鬼は鱗滝さんが祈りを、愛情をこめてつくった面を目印に殺していた。鱗滝さんが自分を責めるように。


「これを言った時女のガキは泣いて怒ったなァ」


空気でわかった。炭治郎は、怒っていると。

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