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雷の音がふたつ ページ6

善逸side


いつだって、俺は逃げてばかりだ。


「ひぃいいい!!嫌だ嫌だァ!あんなふうになりたくない!!ひぃいいい!!」


今だってそう。気持ちの悪い蜘蛛の毒にやられて、木に登って逃げることしかできない。そんな自分につくづく嫌気がさすけど、それ以外の方法を俺は知らない。

ちゃんとやらなきゃって思うんだ。でも、すぐ泣くし、逃げる。そんな自分のことを、自分が1番嫌いだ。

弱虫な俺に誰も期待なんてしてくれなかった、A以外は。

Aは俺に期待してくれた。善逸なら出来るよ、と笑ってくれた。沢山の"音"を聞いてきたから、それがお世辞じゃないことはすぐにわかった。

凄く、嬉しかったんだ。出会ってすぐの俺を見捨てず、心の底から信じてくれた。その期待に答えたいと思えた。けれど、無理かもしれない。

俺は髪がずるむけになって、縮んで蜘蛛の体になって死ぬんだろう。全てを諦めようとした時、音がした。


『はぁはぁっ……ほんと無理!!気持ち悪っ!』


ずっと聞きたくて堪らなかった音。
Aの声だった。視界を滲ませる邪魔な涙を拭ってみれば、息を切らした君がいる。


『ぜ、善逸!久しぶりだね〜』


Aは俺を見つけると、ヒラヒラと手を振った。初めて会った時と変わらないその笑顔に、とてつもない安心感で胸がいっぱいになった。思わず涙が溢れて止まらなかった。


(会いたかったんだよ、ずっと。)


炭治郎と会ってから何度も死ぬ思いをして、その度にAが浮かんでいた。

号泣する俺に君は目を丸くして驚いていた。
鬼はそんな俺たちの空気を壊すように、Aへと近づく。


『ひぃぃっ!!無理無理!』


蜘蛛が近づく度、Aの音が変わる。心の底から怯えた音だ。不快感と、恐怖がぐちゃぐちゃに混ざった音。

そんな音をAから出させている鬼に、腹の底から怒りが湧いてきた。気づけば、


「Aに近づくな蜘蛛野郎!!」


恐怖で固まっていた筈の身体は動いていた。

そこからは、よく覚えていない。
ただ、朦朧する意識の中君が泣きそうな顔でとても怯えた音がしたから


「大丈夫だよ」


炭治郎が俺にしてくれたように、笑った。

じいちゃんがよく言っていた。1つのことしか出来ないならそれを貫けって。


(ねぇ、じいちゃん。俺、ほんとに駄目な奴だけどせめて目の前の大切なこの子くらいは守りたいよ)


だから、

__雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 六連


俺は誰よりも強く、強靭な刃になるよ。

雷の音がみっつ→←花弁がよんじゅうさん



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設定タグ:鬼滅の刃 , 転生トリップ , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時

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