花弁がよんじゅうさん ページ5
◇◆
『ぜ、善逸!!』
善逸が木から降りてくるなんて思わなかった。久しぶりに誰かに助けてもらえたことが嬉しくて、泣きそう。
「なんだコイツ?寝てるのか?」
人面蜘蛛が訝しげに善逸を見るから、私も見てみる。ーーこの子、気絶してるんだけど?!
「やめとけ!お前、既に毒がまわってるだろう?痛くて痛くてたまらないはずだ」
人面蜘蛛が善逸を指さして、ニヤニヤ笑う。確かに、善逸の体から尋常じゃないくらいの大量の汗が吹き出していた。
『っ、善逸!!』
やめて、と言おうとした口が止まる。善逸の空気が変わったからだ。ピリピリと肌に刺すような、空気が善逸の周りを漂う。
さっきまで余裕そうだった人面蜘蛛も、善逸の変わりように表情が崩れた。
「刺せ!!もっと毒を打ち込め!!」
人面蜘蛛の言葉に、周りの蜘蛛が一斉に毒針を私たちに向けた。けれど、善逸は毒がまわっているのが嘘のように軽い動きでそれらを交わす。
目の回るような動きに圧倒されていると、
「ゴフッ!!」
善逸が血を吐いた。毒がまわって、辛くて、痛くて、苦しいはずなのにーーなんで君は止まらないの。
『もう、いいよ!!善逸死んじゃうよ!?』
原作を知っていても、目の前の苦しそうな善逸の姿に恐怖が込み上げる。臆病な君なら私に任せると思った。でも、そっか。無理だよね。
善逸が私の方を向いてふっと口元を緩めた。
「大丈夫だよ」
その言葉と共にビリビリと空気が揺れた。
__雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 六連
「Aは、俺が守るから」
(だって、君はそれ以上に優しい)
雷鳴が轟くような音共に、善逸の刃が人面蜘蛛を貫く。
『善逸!!』
我に返って慌てて、善逸の元へ急いだ。
◇
『善逸!!大丈夫?!』
「!!Aっ!大丈夫、だった?」
善逸はボロボロだった。血を流して、蜘蛛化のお陰で手足がわずかだけど縮んでいる。いつもの善逸なら、秒で泣き叫ぶ状況なのに。ーーなんでこういう時だけ人の心配、しちゃうかな。
『大丈夫だよ!善逸が守ってくれたから!!』
「そっか……良かった……俺、駄目な奴だけど、」
『そんなことない!!』
言葉を遮って、呼吸で毒の巡りを遅くしている善逸の手を握る。
『善逸がいたから、私怪我しなかった!!善逸は駄目な奴なんかじゃない!凄いよ!』
「へへ、嬉しいや」
善逸は笑うけどこんな時、治療も出来ない自分が酷く恨めしかった。
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時