花弁がごじゅうはち ページ23
◇◆
炭治郎の手を引きながら無我夢中で走った。途中に、木箱を見つけ慌ててそれを引っ付かみまた走る。
「はぁはぁ……A、どう、して……」
『喋って体力削っちゃ駄目!!兎に角、走るよ!!』
後ろにいた炭治郎の途切れ途切れの声を遮る様に叫ぶ。身体中が痛くて堪らない。苦しくて、今にも止まってしまいたかったが
『後で……一緒に、土下座して謝ろう!!』
炭治郎を見れば、不安そうな顔をしている。普通なら鬼を連れた隊士など認められない。隊律違反で即刻クビだ。
(あれ?じゃあ、手を貸した私ももれなく辞められるのでは?)
それなら良いじゃないか、と心の中の小さな自分が言うが恐らく無理だろう。辞めるどころかきっと首と胴体がさよならする。
(あぁ……平和からどんどん遠のいていくっ!!)
逃げるのに精一杯で忘れていた。もうすぐ、カナヲちゃんが来ることを。
手にあった重みが消え、慌てて振り返ればカナヲちゃんが炭治郎を踏みつけていた。
そのままカナヲちゃんが刀を振り上げるが、炭治郎が寸前で羽織を引っ張ったようだ。
カナヲちゃんの重心がずれ、禰豆子ちゃんの頭上を刀が通る。
「逃げろA、禰豆子!!逃げろ!!逃げっ…」
『炭治郎!!』
逃げろ、と繰り返す炭治郎の頭をカナヲちゃんが上から足で殴った。地面にめり込んだまま、炭治郎が白目を向いたのが見える。
炭治郎を助けようとすれば、グイッと腕を引かれた。相手は、
「んー!!」
禰豆子ちゃんだった。手を引かれるまま、走ろうとするとすぐさまカナヲちゃんが追いつくのが見えた。
『カナヲちゃん!!待って!!』
こんな言葉で勿論止まってくれるわけもなく、やけくそで刀を掴んだ。
『いっ!!』
「!!どうして、」
カナヲちゃんの小さな声が聞こえた気がしたが、きっと気の所為だろう。
禰豆子ちゃんを見れば、小さくなって走っていく。良かった。と安堵したのも束の間、直ぐにカナヲちゃんが禰豆子ちゃんを捕らえる。
『待って、カナヲちゃ、うっ!!』
立ち上がろうとするが、体に力が入らない。クラクラする頭に血を流しすぎたのだと気づいた。
「伝令!!伝令!!炭治郎・禰豆子両名ヲ拘束本部へ連レ帰ルベシ!!」
その瞬間、鴉の言葉が森に響き渡る。安心と共に、今度こそ視界が霞んできた。朦朧する意識の中、隠の人が頭上で話してるのがわかる。
「この子はいい。私が連れて行く」
可愛い声と共に自分の体が浮いた感覚を最後に、私は目を閉じた。
2878人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時