花弁がごじゅう ページ15
◇◆
長男だから、と誰にも頼らず自分の体を差し出す彼に気づけば抱えていた不満をぶちまけていた。
炭治郎はそんな身勝手な私の腕をそっと労わるように撫でると、少しだけ眉を下げて笑った。笑ったその瞳には、強い意志がみえた。
炭治郎のかっこいい姿にきゅんとしていると、
「兄妹か?そっちの女は、家族じゃないな?」
「だったら何だ!!」
累くんが困惑した様な顔で、私と禰豆子ちゃんを指さした。累くんの言葉に炭治郎はさっきまでの優しい顔は嘘のように張り詰めた顔に戻る。
『ちょっ、炭治郎ぉぉ!!禰豆子ちゃん、手首切れてない!?』
「そうなんだ!傷も深い!早く治ってくれ!」
「兄妹……妹は鬼になってるな…それでも一緒にいる…もう1人は、おい。そこの女」
炭治郎と一緒に禰豆子ちゃんの傷の具合をみる。傷は深く、見ている私の方が泣きそうだ。
そんな私達の後ろで累くんは何やらブツブツ呟いていたかと思えば、急に私に話しかけてきた。
「何故、そいつを庇った?」
『え?……理由なんて、ないよ。無意識だったし』
口に出せば、それは驚くほどすんなりと私の胸の中に落ちていった。
自分の体がどうなってもいいなんて思わない。自分が可愛い。死にたくない。それは絶対に揺るがない。
それでも、彼の傷つく姿は見たくなかった。それは使命や仲間の絆、なんて大層なものじゃない。
ただ、単純に気づいたら体が動いていたのだ。
「無意識、か……本物の"絆"だ!!欲しい…!!」
私の言葉に累くんは大きく目を見開くと、興奮したようにそう叫んだ。そんな彼に、焦ったように姉役の鬼は詰め寄る。
「うるさい黙れ!!」
それに機嫌を悪くしたのか累くんが腕を振り上げると、姉役の鬼の首諸共周りの木が全て切れた。
(ひぃぃっ!!目の前でビュンッて!!ほんと、勘弁してくれ!!帰りたい!!)
恐怖に叫んでしまいそうだったが、炭治郎が手を握ってくれていた為なんとか抑えた。
累くんは姉役の鬼に山にいる残りの隊員達を狩ることを約束させた。自分の首を持って走っていく姿は軽くホラーだ。
「坊や達、話をしよう。僕はね感動したんだよ君たちの"絆"を見て」
無表情のまま、累くんは淡々と語る。確か、原作だとこの後累くんは禰豆子ちゃんを欲しがるんだっけ。
「君の妹とそこの女を僕に頂戴。大人しく渡せば命だけは助けてあげる」
そう。"禰豆子ちゃん"を欲しがるはずだ。じゃあ何で今、累くんは私を指さしてるのかなぁ??
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時