花弁がよんじゅうきゅう ページ13
◇◆
人は、心の底から恐怖を感じた時声すら出せないのだと実感した。
目の前で、さっきまで喋って呼吸していたパッツン君が切り刻まれた。粉々になったその姿に、胃から何かが込み上げてきた。
「はっ!!A、大丈夫か?」
込み上げる何かを抑えるように手を当てていると、炭治郎が気づいて背を撫でてくれた。その暖かな体温に、落ち着いてきた。
『大丈夫、ありが』
「何て言ったの?」
私の言葉を遮る、累くん。下を向いている私には、その表情は見えない。何も答えない炭治郎に再度、累くんが問いかける。
「お前いま何て言ったの?」
(ほんっとに、勘弁してよぉぉ!!)
やっと、落ち着いたのにまた吐きそうだ。それ程までに、空気が重たく濃く感じた。
「Aは下がっていてくれ」
『へ、ちょっ、炭治郎!?』
また、だ。最終選別の時の様に、炭治郎は一瞬私の手を強く握って私の前へと出たのだ。
「何度でも言ってやる。お前の絆は偽物だ!!」
炭治郎の言葉に、1層周りの空気が重く凍てつく氷のように冷たくなった。
「お前は一息では殺さないからね。うんとズタズタにした後で刻んでやる」
『ひっ』
さっき、パッツン君を切り刻んだ糸をまた出しながら累くんは無表情でそう言い放つ。その姿に、短い悲鳴が漏れる。
「でも"さっきの言葉"をとり消せば一息で殺してあげるよ」
「取り消さない俺の言ったことは間違っていない!!」
私がこの空気に耐えられないように、炭治郎も耐えられない筈だ。荒く呼吸を繰り返すのがその証拠。なのに、炭治郎は向かっていく。
鼻が効くからか、糸の匂いを嗅ぎ分け避ける。でも、駄目なんだ。匂いがわかるだけじゃ
__水の呼吸 壱ノ型 水面斬り
累くんの首は斬れない。炭治郎の刀はいとも簡単に折られ、頬も切られた。累くんの糸はさっきの鬼の比じゃないほど、硬い。
刀が折れても尚、炭治郎は止まらない。糸を避け続けるが累くんが糸を上へと引く。
『炭治郎!!危ない!!』
炭治郎の周りには到底避けきれない数の無数の糸。先程のパッツン君の姿が脳裏を掠めた。そんな嫌な想像に、血の気が引く。
あぁ、どうして。恐怖で頭がいっぱいなのに、
『全く……炭治郎まで私の話は無視なわけ?』
「禰豆子!!A!!」
無意識に、糸と炭治郎の間に入り剣で糸を受け止めていた。隣には禰豆子ちゃんがいた。
(そうだよね。お兄ちゃんが傷つくのは、嫌だよね)
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時