花弁がさんじゅうきゅう ページ1
◆◇
ゆさゆさと一定のリズムで揺れる感覚で、私は目が覚めた。うっすらと瞼をあけ、びゅんびゅんと通り過ぎていく背景に意識が更に覚醒する。
『……っえ、こっわ!!なにこれ?!』
「おはようございます、Aさん」
『うぇ?あ、しのぶさんおはようございます?』
慌てていると、隣で爽やかな笑顔のしのぶさんから挨拶された。
なんでしのぶさんがいるんだろう?と考え、思い出す。そうだ。私、冨岡さんに殴られて、
『しのぶさん!冨岡さんどこ行ったんですか!?あの人いきなり殴るとかありえないと思いません??』
「俺ならここにいるが」
文句のひとつでも言ってやろうとしのぶさんの方を向いていると、前から声がした。……前っていうか、めっちゃ至近距離から。
驚いて顔を向ければ、びっくり。私をおぶってくれていたのは冨岡さんだった。
『エッ』
「起きたのなら自分で走れ」
(どうしよう!!私、あの冨岡さんにおんぶされてたんだけど?!)
鬼滅の刃ファンとしては発狂もののシチュエーションに興奮する暇もなく、冨岡さんのその言葉と共に私は地面に落とされた。
『いだっ!!ちょっと、私の扱い雑過ぎません!?』
会って間もないのに、殴られて地面に落とされたのだ。冨岡さん私への扱いが酷いのは気のせいじゃない。
「一刻も早く、鬼の所へ向かわなければいけないんだ。早くしろ」
ギロリと睨まれ、思わず体が固まる。
(あ、あれ?冨岡さんって、こんなに怖かったっけ?)
『私、行くとは言ってないのに……』
殴られて無理矢理連れてこられた挙句、怒られた。子供だと思われるかもしれないが、納得いかず思わず不満が口から漏れた。
その瞬間、冨岡さんに襟のあたりを掴みあげられた。
「さっきから聞いていれば!!お前は何故、鬼殺隊になった?」
『ひ、拾ってくれた人が育手だったから……です』
あまりの気迫に、語尾が小さくなったのは仕方ない。誰だって、いきなり柱に掴みあげられたらビビるだろう。
「お前は生の呼吸が使え、才能があるとお館様は言っていた。何故、人の為にその才能を使おうとしない?」
わかっている。冨岡さんは理由もなく人を怒鳴ったりする人じゃない。炭治郎と禰豆子を助け、2人に希望を与え、2人の為に命をかける覚悟もしていた。
そんな人が何故、こんなにも私に対して怒りの表情を見せているのか心底わからなかった。
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美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです!! (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新しないのですか?続きが気になります! (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ?更新しないのですか?とても面白かったので続きが読みたいです! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです!ヽ(*´∀`)ノ続きが気になります!ゆっくりでいいので更新待ってます! (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2019年6月27日 23時