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『私、ヘチャンのこと好きだよ』
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《速報です》
「う、そ…」
「…」
《S.M.Entertainmentにより、人気女子アイドルRedVelvetの最年少メンバーであるハナの電撃芸能界引退が発表されました。
全国民に愛されていると言っても過言ではない
ハナの引退に世間は酷く混乱しており_____》
偶然朝食を共にしたマクヒョンの隣で、正面から流れる無機質な音を黙って聞く。
横からチラチラと俺を映す2つの黒目に気付いていながら、俺はテレビから目を離さなかった。
「(…チソン、泣いてるだろうなぁ)」
世界中が驚いているであろう今この瞬間、きっと俺だけが動揺していない。
他人事のように脳の浅い部分で情報を捌いて、他人事のように何かを思う。
なんて最低な奴。
そう思うのもまるで他人事で。
でもそれらが自衛反応だってことは自覚していた。
自分と向き合わない為の、
自分の気持ちと向き合えば、俺はきっと、泣いて喚いて閉じこもるなんてものじゃ収まらない。
そこの窓から飛び降りるなり、宿舎のおばさんが持っている包丁を奪って手首を掻っ切るなりして、この世から消えようとする。
だって
目の前に続いていたはずの道が、途端に見えなくなって
道の先にいた大好きな何かが、消えてしまって
止まりかけたことはあっても決して止まることの無かった足が、動かなくなって
俺は
俺はこれから、どうしたらいい
何の為に、生きて、俺は_______
「…ヤ、おい、ヘチャナ、」
「…」
「っ、イドンヒョク！！！」
「…」
強く俺の肩を掴んだマクヒョンのせいで、体が揺れた。
ゆっくりとヒョンの方を向けば、大きな黒目が落ち着かない様子で俺を映し出していた。
すると何故か、更にマクヒョンの顔が青くなっていく。
どうしてそんな顔してるんだろう。
俺より辛そうで、苦しそうなのは何でだろう。
何で俺は普通なんだろう。
「(_____あぁ、成程)」
違うな。
普通、ではない。
焦りに染まったマクヒョンの瞳。
そこに映った、俺の
これは、苦痛でも悲嘆でも、普通でもない、
虚無。
「(…どうりで)」
______何も見えなくなったわけだ。
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