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「あれ〜？ヘチャンさんまさかずーっと間違えてました？あの時お尻だけじゃなくて頭も打っちゃったのかな？」
勝ち誇ったような顔。
いつも俺におちょくられるのが悔しいのだろうか。
ニヤニヤしながら自身の口元に手を当てて煽ってくるAは何処か活き活きしていた。
いつもなら負けじとやり返す俺だけど、不思議とそんな気は起こらなかった。
…いや、"不思議と"は嘘。
理由なんて分かってる。
好きで、好きで、愛おしいから。
至極当然のようにあの時のことを話すAが。
「……ははっ…うん、そうだね。俺の勘違いか」
「えっ」
「そっかぁ…これより薄いピンクかぁ」
二の腕に貼られたそれを見て、そっと触れる。
思い出してみても違い分かんないし、精々言われてみればそうかも？って思うレベルの色違い。
何ならあの絆創膏御守りにしようって大事に取っておいたのに貰ったその日に妹に使われて、視覚的記憶は殆ど無い。超怒って大喧嘩した。
だから、そんな色の違い分かんねーよ。
…なんて苛立ち、微塵も起こらないから、俺はAにとことん単純らしい。
「…覚えてたんだ」
「う、うん…」
「…当たり前に忘れてると思った」
「そんなこと言うならヘチャンだって…」
「忘れるわけないじゃん」
「あっ、ハイ」
忘れるわけない。
俺の人生変わった瞬間を。
初めて本気で自分のものにしたい、人生懸けて幸せにしたいと思える人が出来た瞬間を。
自意識過剰かもしれないけど、俺が君は覚えてないんだろうなって心配してきたのと同じで、君もそんな気持ちだったのかなって。
そう思うと見事な両片想いすぎて、脈が無いだとかそんなことで苦しんでいた瞬間も笑えてくる。
これが本当の両片想いだったら笑えないけど。
「あの時の俺が、俺だってことも気付いてたの？」
「うん。ヘチャン見た時、やった！"来た！"って思ったもんね〜」
「そっか〜……
…え？」
「ん？」
今、なんて…？
「………な、何それ。ずっと俺の事待ってたみたいじゃ〜ん！」
だめだ、何も考えるな、俺。
今までもそうだったろ。
結局何も思い通りにはいかないんだから。
…なんて思いながら、口は勝手に動くし何処かで期待している自分もいて、
"俺"はいつも、"俺"の言うことを聞いてくれない。
「そうだよ」
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