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「ねぇ…ちょっと下手くそじゃない？」
「た、頼んできたのはそっちでしょ」
「片手で貼れって言うの？酷〜い」
「うっ……練習します…」
練習すんの？可愛いな。
そんな言葉をグッと堪えて「嘘だよ。ありがと」と笑う。
練習は俺だけでやってねって言いたかったけど、これも我慢した。
偉い、俺。
「何でそんな所怪我したの？」
「壁スレスレ歩いてたら何か突き出てて二の腕引っかかれた」
「突き…？」
難しい顔で眉間に皺を寄せた横顔も、可愛い。
どんな姿もどんな言動も全部可愛くて
全部、誰にも渡したくない。
今となっては親友とも呼べる仲になった俺達。
軽口も叩けるようになったし、弄り合ったり、軽いスキンシップも取ったりする。
昔の俺が見たら多分死ぬ。
色々あって親友なんて関係になれたけど
ここまで距離を縮めるのには、多大な時間と苦労を伴った。
実際、出会ったあの時からもうすぐ4年が経つし、完全に心を許し合える仲になるまで約3年かかった。
仲良くなろうと俺が一歩踏み出すのにも約3年。
つまり一回壁超えれば超早いってことだよね。流石俺。最強。
…でも不思議だよなぁ。
こういう仲にはなっても、昔から俺はハナさんのファンなんだもんな。
再開した時も、一歩踏み出した時も、心の扉が開いた時も、今も
変わらず俺は、Aが好き。
「壁スレスレってどのくらい？」
ずっと、ずっと
俺だけのものにしたいと思ってる。
誰も��A��のことを知らなければいいのに。
俺だけが知っていて、
俺だけが、見て、触れて、感じることが出来たらいいのに。
既に互いのファンに公認されるくらい"ヘチャンとハナ"のケミは確立していて、この界隈にも世間にも定着しつつある。
…でも、まだだ。
もっと、
ハナさんを好きな人、俺を好きな人、嫌いな人も、何とも思ってない人達にも
皆に、認めさせる。
外堀から、少しずつでも埋めていく。
微塵も俺らしくない、何とも遠回りで、間接的な戦略。
時間がかかるとか、面倒だとか、どうでもいい。
Aが俺の隣で笑ってくれるようになるのなら、どんな苦労も厭わない。
俺、頑張るから。
君を幸せにする為に頑張るから
「このくらい」
「わっ……私壁チガウ！」
「そこ？笑」
俺以外の奴を、幸せにさせないで。
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