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嘘じゃん。
何やってんの俺。
名前聞いてない。
高校生？でも制服着てなかったな。
何歳なんだろ。
この辺に住んでるのかな。
好き
好き、
…なんだこれ
やばい、
すげえ好き。
空っぽの容器に勢いよく入って来た水が、治まりきらなくなって無防備に溢れ出るみたいに
腹の底から、心の深い深い奥底から、ぶくぶくと込み上げて膨れ上がる。
この気持ちが収まらないのに、これっきり？もう会えないの？
あの人のこと何も知らない、何も聞いてない。
あぁマジでしくじった、何してんだよ俺の馬鹿
って思ったのも束の間
《SMの期待の新人Redvelvet！》
《現アイドル最年少、15歳のハナはビジュアルも実力も兼ね備えたSMの秘密兵器！？》
テレビには一目惚れしたあの人が映っていた。
俺が好きになった人はアイドル
出会った瞬間から手の届かない場所にいて
皆から人気があるとはいえ所詮一般人の、平凡を生きる俺とは酷くかけ離れた存在で
あの人はもっと沢山の人から愛されていて、求められていて
正直誰が見ても叶わない恋。
「……ハハ、マジかよ。燃えるね」
まあ俺からすれば、だから何？って感じなんだけど。
手が届かないなら、届く位置まで行けばいい。
存在がかけ離れてるなら、今この平凡を抜け出して、あの人と同じ世界に存在すればいい。
は〜〜…ってか俺以外の誰かに愛されてるってのが気に食わないな。
俺だけが愛していればいいのに。
あの人の目に俺だけが映ればいいのに。
なりたいかも、と思う時間なんて一瞬だと思ったアイドルという職業。
あの人に会いたい。
近くにいたい。
誰にも渡したくない。
「俺、アイドルになる」
母「え？」
そして、誰にも文句言われないくらいのすげえアイドルになって
あの人を、ハナさんを、俺のものにするんだ。
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