第9話 ページ10
治side
最近入学してきた1年生に何故かとても懐いてくれる妹みたいな後輩ができた
なんでかそいつは初対面の俺に「私のこと覚えてますか?」って少し顔を青くして聞いてきた
知らん女に話しかけられることはあっても怯えきった表情で、でも少し期待をした目で見てくるやつは初めてで。少し。ほんの少しだけ興味を持った
度々話しかけてくれるようになったのが何故かとても嬉しくて、気づけば異性で1番と言えるくらいには仲良くなっていた
ファン「きゃー!治くん〜!」
俺は今日、箸を忘れて職員室に割り箸をもらいに行っていた
黄色い声をあげて喜ぶ女子の中に、ひときわ小さな背中が大きな荷物を抱えて職員室に入っていくのが見えた
ファン「治くぅん!今日一緒にお昼ご飯食べない?」
どこの誰なのか分からないやつが俺を昼に誘うが、俺は今日は一緒に食べる人を決めている
『失礼しましたー!』
小さなからだを軽めに折り曲げて、可愛らしい声で先生に向かって挨拶をする目当ての人物
彼女は俺から寄っていかなくても寄ってきてくれた
『宮先輩〜!』
聞き慣れていない名字を呼ばれて俺は直ぐに振り返り、反応した。すると途端に笑顔になるAちゃん
ファンの人たちに一言言ってから彼女を引っ張って空き教室に入る
少しオドオドしている姿が可愛いと思ってしまった
『宮先輩、あの、ほんとに私のことどっかで見たことありませんか?』
確か初めておうた時もそんなこと言よったなぁと思い出しながら「んん〜ないんよなぁ…」と答える
そんなに俺と会った記憶でもあるんやろか
少しその話をしていると突然ガラッと扉が開いた
侑「サム!ここにおったんか!……え?」
俺の話を遮って扉を開けてきたのは俺の片割れのツムだった
俺に双子が居てるって知らんかったんか、目がとびでそうなほど驚いているAちゃんに双子だということを教えた
侑「え、てか2人で食べよるっちゅうことはそういうことか?」
『そういうこと…?』
治「あほ言うな。可愛い後輩や」
後輩という言葉に違和感を感じつつ、俺はすかさずつっこんだ
『そういう関係なんて恐れ多すぎて私には無理ですよ!』
侑「ほーか!」
気の所為かもしれないが、ツムが少し嬉しそうに笑った気がする
そういえば、いつもなら女を毛嫌いするあのツムが珍しく最初から優しく接している気がする
少し喋ったあと、Aちゃんはお弁当を持って嘘か誠か分からない言葉を発して教室を出ていった
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作者名:りんごとミカン | 作成日時:2020年6月12日 1時