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urt side
「すみません。住所やっぱり変更してもらっていいですか?」
そう、運転手の人に伝えたのはもう30分も前のこと。
マンションに着いた俺たちは代金を払い、タクシーを降りた。
俺たち、と言ってもAはスヤスヤと寝ている。
Aを背負い、かばんを手に持ちながらエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの中にある鏡を見ると、随分と幸せそうな顔で寝ているのがわかる。
どんな夢見てんだろうな、コイツ。
「ふっ…アホみてぇな顔してんな」
エレベーターが5階に着いたところで背負い直し、自分の部屋へと歩き出す。
耳元では寝息が聞こえてきて少しくすぐったい。
ガチャガチャ、ガチャンッ
鍵を差し込み部屋へ入り、直ぐに鍵を閉めた。
Aの足を手探りで触り、ヒールを2つとも脱がせる。
俺も自分の靴を脱いで直ぐに寝室へと向かった。
…否、向かおうとした。
廊下を歩いている途中でAがうなり出したのだ。
小さな声で何か言っている。
「あ…?なに?」
「み、ずっ…!うっ…!!」
「ちょ、吐くなよ!?おい!!」
今にも、と言ってもいいような声を出すA。
申し訳ないと思いながらすぐさま床に落とし、ビニール袋をキッチンに取りに行く。
…が、時すでに遅し。
廊下に戻る頃には見るに堪えないモノが…まあ、それは酷く。
思わず大きなため息をついた。
コイツ、ココまで酷く酔うことなかったんだけどな。
とりあえずタオルでAの口を拭き、ズルズルと引きずるように寝室へと運ぶ。
床だけでなくAのスーツも汚れている。
「はぁ……許せよ」
聞こえていないだろう言葉を呟き、スーツのボタンに手をかけた。
プチプチと嫌に響く音は、俺の罪悪感を増幅させていく。
けどそんなこと考えていられない。
今日の夜着るはずだった自分のTシャツを、下着姿になったAに着せた。
そしてベッドへ乗せ、俺は廊下の処理へ。
鼻をつまみながらゴム手袋とビニール袋を手に、必死に掃除をした。
……アイツ起きたら何してやろうかな。
なんてことを思いながら。
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セツ(プロフ) - まっちゃさん» ありがとうございます!続きの件考えておきますね^^* (2021年9月17日 0時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - めちゃくちゃ好きです。続き出してくれると嬉しいです。結婚した後の話とか (2021年9月16日 22時) (レス) id: fd1535e5b9 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 松野かほさん» ありがとうございます! (2021年9月13日 7時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - めっっちゃすきです…… (2021年9月13日 1時) (レス) id: 845a75d25b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セツ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年9月7日 0時