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あれから何時間経っただろうか。



左手は握られたままで、自由なのは右手しかない。



蘭に送って貰った授業のノートの写真を見たり、本を読んだり。



偶に快斗の熱を測ってみたりもしたけれど、39.0を前後していて治っているようにも感じない。



病院に行く手もあるけれど、交通手段もお金もあまりない。



千影さんが居たら即行っていたと思うけれど、熱を出したことは私と青子しか知らない。



だから、私が看病しないと。



そう思っている片隅に、青子にも知られていない彼の一面を私が知っていると思うと、優越感に浸ってしまう。



最低だって自分が一番わかってる。



こんなにも好きになるなんて、思ってなかったから。



ネガティブになっていた思考を止め、ベッドに向かい合うように座る。



右手で快斗の首を触ると、少しだけ熱が下がっているようにも感じた。



「大丈夫…。」



彼に問掛けるように、自分に暗示をかけるように、そう呟く。



「それと…」



あなたに出会って、あなたに恋して…。



「ごめんね。」







快斗 side



『っ……。』



意識を呼び戻すと、頭がガンガンと痛かった。



ここ…俺の部屋か…。



右手が暖かいと思い横を見ると、Aがなにやら考え込んでいる。



するといきなり動いたので、急いで目を瞑った。



ひんやりと冷たいAの手が首に当たる。



冷てぇ…。



熱くなりきった体にはちょうど良い。



「大丈夫…。」



Aの口からそんな言葉が零れた。



俺に言ってくれてんのか…?



それだったら嬉しい。



得体の知れない、でも決して嫌ではない何かに浸っていると、また言葉が聞こえてきた。



「それと…ごめんね。」



…!?



風邪をうつしたからか…?



いや、たったそんなことでこんなにトーンが低くなるのか。



だとしたら他のこと…?



薄ら目を開けてみると、Aはベッドに突っ伏すように目を閉じて眠っていた。



あークソ、なんなんだ…。

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ピコピコハンマー - 「気をつけて」は「を」です!とっても面白い作品です!これからも頑張ってください!! (2021年6月19日 9時) (レス) id: a1310badd0 (このIDを非表示/違反報告)
魔理華 - 楽しみに待ってます! (2019年7月15日 20時) (レス) id: 28703d16e4 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 魔理華さん» ありがとうございます!頑張りますっ! (2019年7月13日 0時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)
魔理華 - 面白かったです!続きが気になります!更新頑張ってください応援してます (2019年7月12日 7時) (レス) id: 28703d16e4 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 黎夢さん» ご指摘ありがとうございます!当方あまり弓道に詳しくなく、調べた限りの事で更新しておりました…。良ければ、改善点を教えていただけないでしょうか? (2019年7月8日 10時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セツ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年5月25日 11時

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