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「ここ…。」
辿り着いた先は見慣れた町、江古田町。
ベランダに降ろされた私は、怪盗キッドが消えた後もそこでぼーっとしていた。
…またここから飛び降りたら。
いや、辞めておこう。
きっとあの人の怒声が響くはずだ。
ガラガラ…
窓が開くと、月明かりに照らされて分からなかった彼の顔が段々と鮮明に見えていく。
「黒羽、くん?」
『齋藤?』
そこに立っていたのは、かつて同じクラスだった黒羽快斗だった。
『と、とにかく入れ。』
「え、えぇ。」
お互い動揺していて、しどろもどろになる。
家に招かれ、私はそれに素直に従った。
『…で、なんであんな事を?』
リビングに通された私は、お茶を貰い一息つく。
すると黒羽くんは目の前に座り、問い詰めてきた。
「……。」
彼は、知らないのか。
私があれから学校でどんな風な態度を取られてきたか。
「話すと長くなるわよ。」
『…あぁ。』
何故か私の口からはスラスラと言葉が出てきた。
母と父のこと、叔父さん叔母さんのこと、刑事さん達のこと、学校の同級生のこと。
話しているうちに、段々視界が歪んでいく。
あぁ、泣いているのか。
泣いたのなんて、いつぶりだろう。
多分母さんと父さんが居なくなった日以来だ。
言葉に詰まっていると、目の前が白い布で覆われる。
その布で涙を拭かれ、目を開けると目の前には鳩が3羽、そこに居た。
「…へ?」
『ゆっくりで、いいよ。』
優しい顔をして笑った黒羽くんは、私のことを受け止めてくれる、そう直感した。
もう、全て身を任せてしまおう。
そんな気持ちで、また話を続けた。
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ピコピコハンマー - 「気をつけて」は「を」です!とっても面白い作品です!これからも頑張ってください!! (2021年6月19日 9時) (レス) id: a1310badd0 (このIDを非表示/違反報告)
魔理華 - 楽しみに待ってます! (2019年7月15日 20時) (レス) id: 28703d16e4 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 魔理華さん» ありがとうございます!頑張りますっ! (2019年7月13日 0時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)
魔理華 - 面白かったです!続きが気になります!更新頑張ってください応援してます (2019年7月12日 7時) (レス) id: 28703d16e4 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 黎夢さん» ご指摘ありがとうございます!当方あまり弓道に詳しくなく、調べた限りの事で更新しておりました…。良ければ、改善点を教えていただけないでしょうか? (2019年7月8日 10時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セツ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月25日 11時