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「っん……。」



薄らと目を開ける。



「っ…!」



痛い。痛い。



鈍器で殴られたような痛みが、頭を襲う。



『起きたか…!?』



タイミング良く入ってきた快斗が駆け寄ってくる。



「ち、近づいたら移る…。」



上半身を起こし、ストップの意味を込めて手を前に出した。



『んな事言ってられるかよ…。39度越えてんだぞ?』



「は…?」



『帰ってきた途端倒れたから急いでベッドに運んだんだよ。ついでに熱計ったら39.5。』



そんなに、熱が上がっていたなんて。



『それよりA。』



「…?」



真剣な顔持ちで見詰めてくる。



『お前、今度の手伝いは休め。』



「え……。」



『もし熱が引いたとしても、体のだるさはそう簡単に治らねぇ。』



「でも私の仕事は…!」



『寺井ちゃんに頼む。』



「い、や…。嫌よ…!」



泣きたくないのに。



快斗をこれ以上困らせたくないのに。



弱った体だからか、目の前が滲む。



私が彼の手伝いをしなかったら、私の存在価値は何?



なんのために頑張れば良いの。



「っ…絶対に嫌…!」



『ダメだ。今回でわかっただろ。Aは頑張りすぎる癖がある。本当は熱に気づいてたんじゃないのか?』



「っ……。」



図星で何も言葉が出ない。



確かに、熱には何となく気づいていた。



ここまであると思わなかったけど。



『あと5日あるから、調査は俺に任せろ。』



「5日あるならっ…私も熱治して当日は…!」



『だから、だるさは治んねぇだろ。』



「治る…。治す。」



『それでも俺が許さない。』



「快斗に私の体調は関係ないでしょ!」



『あるんだよ!!』



言い合いの末、快斗の出した大きな声により、ピタリと音がやんだ。



『あるんだよ…。Aが熱を出したら俺が心配になる。無理すれば、すぐに駆けつけたくなる。看病をしてやりたくなる。Aに……会いたくなる。』



「っ…!?」



さっきとは打って変わって弱々しく呟いた快斗。



『だから頼む…。まずは体を大事にしてくれ。』



「………。」



そんな顔で頭を下げられたら、Yes以外の言葉が出てこないじゃない。



「わかっ、た…。」



『…良かった。ゆっくり休めよ。』



私の頭を撫で、部屋から出ていった。



「……ゴホッ…。」



何とかして行ってやろうか、なんて考えが頭をよぎったけど、本当に体がだるくなってきた。



暫くは安静ね……。

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ピコピコハンマー - 「気をつけて」は「を」です!とっても面白い作品です!これからも頑張ってください!! (2021年6月19日 9時) (レス) id: a1310badd0 (このIDを非表示/違反報告)
魔理華 - 楽しみに待ってます! (2019年7月15日 20時) (レス) id: 28703d16e4 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 魔理華さん» ありがとうございます!頑張りますっ! (2019年7月13日 0時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)
魔理華 - 面白かったです!続きが気になります!更新頑張ってください応援してます (2019年7月12日 7時) (レス) id: 28703d16e4 (このIDを非表示/違反報告)
セツ(プロフ) - 黎夢さん» ご指摘ありがとうございます!当方あまり弓道に詳しくなく、調べた限りの事で更新しておりました…。良ければ、改善点を教えていただけないでしょうか? (2019年7月8日 10時) (レス) id: 387ee06ba6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セツ | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年5月25日 11時

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