リトライ/alft wskr ページ6
『こんにちは?はじめまして』
「はいこんにちは」
見覚えある色のスーツ。
とはまた別に、感じた違和感に咄嗟に声をかけてしまった。
とくに違和感の正体もわからないまま、
『餡ブレラのひと?』
「ああ、まあ一応。仕切ってますよ」
『へえ、ボスなんだ』
やっぱり。
現場でもよく目にする赤色。
ならばほかに何が違和感なのか。
『あ、ごめんなさい。なにもないのに声掛けちゃった』
「いえいえ全然」
なぜだか、向けられた視線に肌が粟立つ。
会話は普通なのに。普通とは言えない、言葉じゃ言い表せない気持ちの悪いこの場の雰囲気に飲まれそうになる。
『犯罪やめてくださいね〜』
「そーれはちょっと難しいなぁ〜」
考えても考えてもわからないものの、少しずつ記憶の扉が開いていくような、これ以上深追いしては行けないと警告が聴こえたような、そんな感覚に陥る。
これがなにから呼び起こされているのかももうわからないが、圧迫感のある不安に耐えきれずそっと無線に手を伸ばす。
運良く指名手配かかってたりしないかな。
名前はわからないけど、餡のボスだって言えばきっと伝わる。
誰に見せる訳でもない心の中でそう強がってみせる。
ああ。
違和感の正体に、気がついてしまった。
わたし、この人知ってる。
新人でもない私がどうして、
この人の名前も分からないんだろう。
『はじめまして、ですよね』
「ええ。はじめましてですよ」
その場しのぎのそんな会話はほんとうになんの意味もなくって、ぐらっと傾いた視界を思考とともに放棄して、やってしまったなあ、とばかりに目を瞑った。
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なな(プロフ) - 「あくる日の」のお話めちゃくちゃ好みです...!悪いれだーさんまた読みたいです (3月27日 20時) (レス) @page5 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
ちーかのすけ(プロフ) - マジで好きです!(*´ω`*)今回もめっちゃ良かったっす😇✨💕 (2月13日 8時) (レス) @page11 id: 927919367a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなり | 作成日時:2024年2月10日 19時