あくる日の/rdr yjr ページ5
「なに、なんで泣いてんの?」
俺の事ほんとに好きなら、手かして?
甘い声でそう言ったあの彼と目の前のこの人が同じ人間だとは微塵も思えないような、低く冷たい声が処理速度の落ちた使えない頭を刺激した。
「もうやっちゃったもんはしょーがないよ。おれの役に立ててよかったね?」
Aにしか頼めない、なんて言われたから。
なんの罪もない人を殺したしお金も奪った。挙句の果てには正義に追いかけ回されて。
身も心も疲弊しきった今、得られたものは後悔と虚しさ。
一体私は、何を追って何を得るためにこんな事をしたのだろうか。
「金は振り込んどくから。
まあ、またホットドッグ買いに来てよ。じゃ、また」
二度と、会わないために。連絡先だって消してやる。店になんて行くもんか。
わたしたちの関係値を表すかのような、冷たい風に吹かれぶるりと身震いする。
「……引き止めないんだ?」
どうして気づけなかったんだろう。
『引き止めても行っちゃうでしょ』
とことん、使い勝手のいい、頭の悪い女だと、今ならわかる。
『レダーさんって、いっつもそう』
最後の最後に何か言ってやろうと思ったが、どれだけ頭を捻っても出てくるのは溢れんばかりの愛とか恋とかどうでもいい感情ばかりで。
喉から絞り出したのはどうしようもなく不格好なツギハギの言葉。嗚咽混じりの酷い音。
嫌味のつもりで笑って見せた。
「…ごめんね、嘘だよ、全部。いじわるしたくなった」
薄汚れたコンクリートに膝を擦り付けることをどうとも思わない、とでも言いたげに潔くしゃがんだ彼と視線がかち合う。
だいすきなその瞳には、ひどい顔で笑う私。
「ありがと。さすが、おれのA。いい子」
あと何回、こんな思いをしなくちゃいけないの。
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なな(プロフ) - 「あくる日の」のお話めちゃくちゃ好みです...!悪いれだーさんまた読みたいです (3月27日 20時) (レス) @page5 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
ちーかのすけ(プロフ) - マジで好きです!(*´ω`*)今回もめっちゃ良かったっす😇✨💕 (2月13日 8時) (レス) @page11 id: 927919367a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなり | 作成日時:2024年2月10日 19時