同じ夜明けに、青空の君へ/aoi rdy ページ13
暗い部屋の中、ベランダを覗けば夜明けが見える。
青が、少しずつ消えていく。夜明け。
この夜明けを、あなたも見ているだろうか。
彼が消えてから変わったことと言えば
せいぜい新しい飲食店がオープンしたとか、もう冬も終わりそうな季節になったとか、たかがそれだけ。
誰も知らないのか。
それとも、知らないフリをしているのか。
彼のおかげでなにか法が改正されたり、彼の像が置かれて彼の名前がつけられた公園ができたり。そこまでしてくれとはいわないけど。
ほんとうに、なにも変わらない。
ほんとうに、ただ青空にあの人が溶け込んだだけ。
ただそれだけだった。
無意識のうちに電話をかけようとしてしまう。
そのまま、震える指で、いつだって1番上に表示されるその番号を押す。
もう見飽きた。
けれど、私は今日もまた手元の小さな液晶に映し出される11桁の数字を眺めている。
呼出音だけが部屋の中に響く。
願わくば、このままで。
変化なんてもうごめんだ。
変わらなくっていい。彼の声すら聞けないことを寂しく思うままでいい。
祈り続けることももうやめてしまいたいから。
そんな傲慢すぎる願いを断ち切るかのように、
呼出音が途切れた。
「A?」
ぶつり。
震えの止まった指が、電話を切る。
途端に部屋は静まり返って、怒りや罪悪感や苦しさの混ざった寂しさに近いなにかが心を染めあげた。
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なな(プロフ) - 「あくる日の」のお話めちゃくちゃ好みです...!悪いれだーさんまた読みたいです (3月27日 20時) (レス) @page5 id: 412825c0ad (このIDを非表示/違反報告)
ちーかのすけ(プロフ) - マジで好きです!(*´ω`*)今回もめっちゃ良かったっす😇✨💕 (2月13日 8時) (レス) @page11 id: 927919367a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなり | 作成日時:2024年2月10日 19時