◇月下美人 2 ページ29
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「ねぇ…何か釣れるの？」
夜釣りにきてい俺に
上から
優しく
耳に心地よい声がした
見上げたそこに
この時期に似つかわしい
暗がりでもわかるほど
白い肌をした
人がいた
まったく気配を感じなくて
びっくりし過ぎた俺は
すぐに声がでなかった…
「ねぇ？…聞こえてる？」
くふふっと
妖しく微笑んだ
「…いや。今日はダメだね…」
かろうじてでた声が掠れていた
「ふふっ…そう…なんだ…」
気のせいかと思ったけれど
もう一度聞いたその声は
耳に残る
優しく響く声だった…
俺は
釣りなんかそっちのけで
なぜがその俺に話しかける声を
ずっと聞いていたいと思った
そのまま
何も言わず
そっと隣に座り
何かを見つめていた
何を見ているのか気になって
目線の先をたどると
そこにはゆらゆらと揺れる波
深く吸い込まれそうな
海に浮かぶ
月を見ていた
そのまま
また
目線を戻すと
短い黒髪がふわふわと風に揺れる
邪魔になったのかそのやわらかそうな髪を
そっと耳にかけた
そこから見える
その横顔が
顎のラインが
白くキレイな頬までも
顕になって
あまりにもキレイで
触れたい…
「そんなに…見つめないでよ…」
俺は
声をかけられるまで
見つめ続けていることに
気づかなかった…
そして
触れたい…
だなんて
そんな女に向けるような思考に
少し戸惑った
そう…
白くてキレイな肌なのに
優しく心地よく聞こえる声は
男だった
小首を傾げて
くふふっと
独特な笑い方で
俺を見つめ…
また視線を海へと戻した
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作者名：REN | 作成日時：2020年4月17日 11時
