クル先のマブは美術教諭【twst】 (ページ40)

今日:34 hit、昨日:15 hit、合計:185,303 hit

　観察ページ40

〈教室〉

クルーウェルは今まで気づいていなかったが、意識して教室を見回せばあの派手な紫の髪はちゃんと存在していた。

出席番号3番、ランドルフ･ボグジーズ。

クルーウェルは1日ランドルフを観察して気づいたことがあった。

まず、彼には友達居ないんだろうなということ。さすがに周りの席の生徒は彼を認知しているだろうが、彼はあまり人から話しかけられていなかった。

もうひとつ。彼は思っていたより顔がいいということ。というか、好みの顔だった。
錬金術の授業で鍋に入れるための水を、ドジな生徒がランドルフの頭にぶちまけた。濡れた髪をかきあげ、眼鏡を拭いている顔は目つきは悪いものの、非常に整った顔面であった。必死に謝るドジな生徒は｢大丈夫、気にすんな｣と微笑んだランドルフに十中八九惚れただろう。普段あんなにも存在感が薄いのに。

そして最後に、彼は魔法が上手いということだ。魔法にも上手い下手がある。同じ魔力量でも魔法陣の正確さ、呪文の発音、想像力、創造力などで魔法のクオリティや強さが変わってくる。
ランドルフはびしょ濡れになった体や髪、制服や白衣を風魔法でものの数秒で乾かしたのだ。

そして錬金術の授業も、綺麗な形で色の澄んだ宝石を作り出した。透明度は勿論だが、複雑な形であればあるほど作り出すのが難しい。クルーウェルは錬金術は得意だったため、造形の美しさや透明度は劣っていない自信はあった。しかし、自分の宝石は赤と無色と黒という簡単な色なのに、アイツはピンクや青と紫のグラデーションなど、出すのが意外と難しい色を巧みに使用していた。

なんかめっちゃムカつく!

クルーウェルはランドルフがあんなに凄いのに、何故誰からも注目されていないのか疑問に思ったし、漠然とムカついた。もっと見せびらかせばいいのに。もっと偉そうにすればいいのに!

クルーウェルがランドルフを観察して気づいたことは、“コイツ、もっと自信持てよ”ということである。せっかく顔がいいのに前髪とメガネで隠して、せっかく魔法が上手いのに誰も彼を見ていない。

勿体なさすぎる。

クルーウェルはこの紫根暗陰キャ眼鏡を
絶対にカリスマイケメン魔法士にしてやると
勝手に心に誓った。