クル先のマブは美術教諭【twst】

　嫌だ ページ36

〈トレインの研究室〉




｢ランドルフ、あの絵を描いたのは君だろう。｣

ランドルフは喉が張り付いたように声を発することが出来なかった。


歓喜と恐怖で。


ランドルフは嬉しかった。
自分の絵だと気づいてくれたのだ。

同時に恐ろしかった。
口止めに脅されていたのだ。

16歳の少年に大した弱みなどない。
弱みがないなら作ればいいのだ。
当時の美術教諭はランドルフを襲い、犯した。
挙句、ムービーまで撮りやがったのだ。





喋ったら、あの映像をばら撒かれる。





｢……ち、違います。あれは僕の作品じゃない。｣

｢……そうか。ではなぜ君は泣いている。｣


わかっている。自分が泣いていることくらい。
トレイン先生なら信用できる?
もしかしたら幻滅するかもしれない。嫌だ。


イヤだ。


ランドルフのことをなんだかんだ気にかけてくれているトレインを、あれがランドルフの絵だと気づいてくれたトレインを、疑うなんて嫌だった。



｢……トレイン先生………助けて……｣



1度声を出したらもう、ダムが決壊したように洗いざらい話した。皆の作品をコンクールに出しておくと言って美術教諭が美術部員の作品を回収したこと、コンクールに提出する絵は基本寮で描いていたため他の部員はランドルフの作品だと気づかなかったということ。ポルノムービーを撮られて脅されたこと。

ランドルフの腕にいつも巻かれている包帯は赤く滲んでいた。


｢辛かっただろう。好きなだけ泣くといい。｣


話を聞いてトレインはポロポロと涙を流すランドルフをそっと抱きしめた。

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