悲しきかな世界 ページ35
〈教室〉
1年生の終わり頃、ランドルフは1枚の絵を完成させ、晴れて自分のユニーク魔法を編み出した。
描いた絵の題名は「ロザリア」。
自分たちと同じくらいの歳の少女の肖像画だった。
1年生の初め頃から描き始め、1年弱、魔力の詰まった絵は、技術は未熟だとしても今後100年は動き続けるだろう。
素晴らしい出来だった。
作品が学生世界コンクール16歳の部で優勝する程には。動く絵を描くものは他にもいたが、ランドルフの作品程美しく、繊細な動きをする絵を描くのは他の16歳の少年少女には不可能だった。
作品は学校に飾られ、表彰式も行われた。
ランドルフの同級生で美術部の顧問の息子の名前で。
ランドルフは彼が表彰されるまで知らなかった。
自分の作品が人の作品にされていることを。
ランドルフは諦めた。
人を信じることを。人に期待することを。
いつまで経っても自分の存在意義を見いだせない。ミドルスクールの時も、エレメンタリースクールの時も今も。
無自覚に消えてしまう自分に存在意義を見出すなど、ランドルフには無理だった。ハイドアンドシークをかけようと思ってかけることは出来るが、考え込んでいる時や集中している時は無意識に発動してしまうのだ。
生まれながらのユニーク魔法も未だ制御出来ない上、
新しく出来たユニーク魔法も他人に奪われた。
「ランドルフ・ボグジーズ。」
ランドルフはビクリと肩を揺らし、自分が消えていることに気づいた。ランドルフの名前を呼んだのはトレインであることにも。
「トレイン先生……。なんで」
なんで分かったの?消えてるのに。
「眼鏡が浮いているからな。」
ランドルフは眼鏡を消し忘れることが多い。無意識にユニーク魔法を発動していても何故かそうなることがある。ランドルフはなんだかすごく恥ずかしくなった。
腕の切り傷に触れ、痛みを感じる。
未だ制御出来ないユニーク魔法を解除するには痛みが必要だ。痛みにはランドルフのユニーク魔法を強制的に解除する力があった。そんなだからランドルフの自傷癖はいつまで経っても無くならない。
「……トレイン先生。なんの用でしょうか。」
「私の研究室に来なさい。」
それは命令だった。断ることは許されない。当時のトレインはまだ黒い髪が残っていたから、より、恐ろしく見えた。
「……はい。」
396人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヒューガ(プロフ) - 夢喰さん» ありがとうございます!頑張ります〜😊😊 (2022年6月17日 21時) (レス) id: 4a1ee837e6 (このIDを非表示/違反報告)
夢喰(プロフ) - 更新頑張ってください!!めっちゃ好きです!! (2022年6月13日 0時) (レス) @page23 id: 5ee2b54502 (このIDを非表示/違反報告)
ヒューガ(プロフ) - 月宮さん» えーッ!ありがとうございます!! (2022年5月5日 19時) (レス) id: 4a1ee837e6 (このIDを非表示/違反報告)
月宮 - うぐぅ...あ"...ずぎぃ... (2022年5月3日 18時) (レス) @page15 id: 23123a7f78 (このIDを非表示/違反報告)
ヒューガ(プロフ) - 洸さん» ありがとうございます!モチベーション上がります! (2022年4月26日 5時) (レス) id: 4a1ee837e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヒューガ | 作成日時:2022年4月10日 8時